5年目を迎えた安倍政権に綻びが顕在化

衆参の議決で発議が成立した場合は、「60日後~ 180日後」に国民投票が実施される。その点も含めて、現在の与野党の憲法問題への取り組みを見ていると、常識的には国民投票まで1年~1年半の時間が必要だろう。その期間をこの先、どこで設定するのか。

今後、数年の政治日程を見ると、来年の18年は、9月に自民党総裁任期満了による総裁選びがある。衆議院議員の任期満了も18年12月なので、今年から18年暮れまでの間に次期総選挙が実施される。19年は、4月に統一地方選、夏に参院選、10月に消費税増税実施が控えている。20年は7月に東京オリンピック・パラリンピックが開催となる。それを前提に改憲スケジュールを考えると、次の3つの期間が浮かび上がる。

『安倍晋三の憲法戦争』塩田 潮(著)・プレジデント社刊

第1は、今年の秋から暮れにかけて総選挙を行い、勝ち抜いて安倍首相が総裁3選による18年9月以降の続投を確実にした上で、総選挙後から19年3月頃までの1年~1年半を使って改憲を仕上げるプランである。第2は、今から1年前後の時間をかけて改憲案の発議を行い、発議後、衆議院を解散して18年3月頃までに総選挙と憲法改正の国民投票を同日選で実施するプランだ。第3は、オリンピック後の改憲挑戦という案で、18年9月以降の政権担当を前提に、オリンピック閉幕後、21年9月の総裁任期満了までの1年余に発議と国民投票を実施するという遠大なプランもあり、と見る人もいる。

第1案は、総選挙敗北によって「衆議院での改憲勢力3分の2超」喪失の危険が残る点が懸念材料だが、一方で総選挙で国民に改憲の是非を問い、勝てば「信を得た」と唱えて改憲作業に入ることができるというメリットがある。第2案は、「衆参での改憲勢力3分の2超」という現有議席で発議の議決を行うから、国会での調整という壁さえ越えれば、発議のメドは立つが、国民投票が一発勝負となり、改憲案否決となる心配が消えない。第3案は、発議の前に衆参の選挙があるため、「衆参での改憲勢力3分の2超」を継続して確保できるかどうかが不明という問題が残る。

いずれの案も、安倍首相の政権基盤の安定が前提条件である。アベノミクス、安倍外交とも高得点で、内閣支持率も好調でなければ、実現は難しい。ところが、5年目を迎えた安倍政権は、森友学園疑惑が浮上する一方、法相や防衛相の迷走答弁など、随所に綻びが顕在化し始めた。改憲実現には大きな政治的エネルギーが必要だが、挑戦以前にエネルギーを使い果たして「改憲どころではない」という末期症状に陥る心配も生まれ始めた。

安倍首相は2度目の政権担当で、第1次内閣の失敗の教訓を生かし、長期政権を築いてきたが、最大の課題は、第1次内閣のように「逆風・窮地・苦境」に立たされたとき、それを跳ね返し、乗り切るパワーと力量の持ち合わせがあるのかどうかという点であった。その点は2度目の政権の4年2カ月では、ここまでまだ一度も本格的に試される場面はなかった。いよいよ裸の実力が問われる正念場を迎えた。憲法のあるべき姿、改憲の是非、改正項目の選択といった問題が焦点となるが、それだけでなく、改憲を推し進める安倍首相と自民党政権に対する国民の目が成否の決め手となる。「改憲政戦」はこれからが本番である。