改憲案の国会発議と国民投票は「19年まで」
安倍晋三首相は5月3日に「憲法に自衛隊明記。2020年に新しい憲法施行」と打ち出して話題を呼んだが、それから2カ月が経過した。7月2日投開票の東京都議選で自民党が歴史的大敗を喫し、首相の政権基盤が揺らぎ始めたが、改憲挑戦計画には変更はない、と強気の姿勢である。在任中に改憲挑戦という決意は、今も変わりはないと見て間違いない。
安倍首相は5月3日の改憲メッセージ表明の後、早速、12日に自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長と会談して「安倍構想」に沿った改憲案の原案づくりを指示した。続いて21日収録のラジオ番組で「年内にまとめて国民に示す」と明言した。推進本部は6月6日、幹部会で年内をメドに党の改憲原案をまとめる方針を固める。6月21日の全体会合で本格的な議論を開始した。
自民党の尻を叩き続ける安倍首相は24日、神戸市での講演で、「年内」からさらに踏み込んで、改憲原案の衆参の憲法審査会への提示を「今秋の臨時国会の会期内に」と表明した。性急すぎるほどの前のめりだが、急ぐ理由の一つは政治日程である。
自ら「20年施行」と期限を切ったが、東京五輪・パラリンピックの年だから、開催前の「20年前半の施行」を想定していると思われる。であれば、改憲案の国会発議と国民投票は「19年まで」が条件となる。
ところが、衆議院議員は18年12月に任期が満了する。参議院は19年夏が次の改選期だ。自民党と公明党の連立与党はここまで衆参の選挙で4連勝を遂げ、その結果、首相が「改憲勢力」と見なす自公と日本維新の会の合計議席が発議要件である「衆参の総議員の3分の2」を初めて上回った。安倍首相は現有議席で発議の議決に挑む腹と見られるが、「20年前半の施行」から逆算して、こんなスケジュールを考えているのだろう。
まず今秋の臨時国会に改憲原案を提出する。安倍首相の2期目の自民党総裁任期は18年9月で満了するから、その前の18年の通常国会までに衆参で発議の議決を行う。総裁3選を果たして21年9月まで在任を可能にした後、19年までに国民投票を実施する。
その場合、18年12月までに行われる次期総選挙と改憲案の国民投票を同日選で実施するプランも選択肢に入れているに違いない。その点をめぐって、保岡氏は6月13日、都内での講演で、国会の判断次第で容認されるとの考えを示した。だが、憲法問題について、インタビューに答えて「それほど急がなくていい」と話している自民党の二階俊博幹事長は16日、反対に「一緒にやるのは適当ではない」と否定的な見方を口にしたという。