自公は憲法問題では「同床異夢」

1月20日、通常国会が開会し、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。憲法について「施行70年の節目」「具体的な議論を深めよう」と訴え、改憲意欲を強く打ち出した。

自民党の二階俊博幹事長は22日のNHK番組で、改憲問題に関して「できるだけ早く党としての一定の方向をまとめたい」と発言し、今国会での改憲案の国会発議についても「状況を見て判断」と口にした。今国会で、衆参の憲法審査会での各党協議、改憲原案の取りまとめ、改憲案の発議の議決まで進めるという「改憲スケジュール」も否定しなかった。改憲に前向きの日本維新の会で憲法改正推進委員会会長を務める小沢鋭仁氏も、インタビューで「われわれとしては2017年の通常国会での発議を目指す」と述べた。

だが、「改憲スケジュール」について、公明党憲法調査会長の北側一雄副代表に尋ねると、「『スケジュールありき』ではない。まずいかに合意形成をしていくかが大事」と語った。安倍首相は「在任中に改憲実現を」と口にしてきたが、北側氏は「そんな感じは全然持っていない」と受け流した。自民党憲法改正推進本部長代理の中谷元氏も、「各党の熟議で納得と共感を得られるまで議論しなければいけないので、今の時点で『いつまでに』というものはない」と話している。

安倍首相は自身の政権担当期間をにらみながら「改憲スケジュール」を思い描いていると見られるが、それ以上に気になるのは、改憲案の取りまとめで各党の足並みが揃うかどうかだろう。発議には、衆参で総議員の3分の2以上の賛成が見込める改憲案の取りまとめが必要だが、改憲容認の自民党、公明党、維新、日本のこころを大切にする党の4党のうち、公明党がノーなら発議要件に衆議院で8議席、参議院で22議席、維新がノーの場合は参議院で9議席、不足する。

各党は今年の通常国会で、まず衆参の憲法審査会で論点整理を行う方針である。各党の関心項目を拾うと、自民党は「9条への自衛隊と自衛権の明記」「緊急事態条項の新設」、維新は「全教育無償化に必要な改正」「地方自治の章の全面改正」「憲法裁判所の新設」、党内に改憲派と護憲派が同居する民進党は「首相の衆議院解散権のあり方」「違憲立法審査制度」などが中心だ。

「加憲」の公明党は、一時期、環境権や環境保全の義務などの新しい人権条項の追加を唱えていたが、北側氏に確かめると、「党内でコンセンサスを得ている段階ではない。憲法の中にどう位置づけていくか、各論の議論に入ると、難しい問題がある」という答えが返ってきた。「加憲」と言いながら、憲法案は明確ではない。北側氏は「9条は集団的自衛権の問題で解釈を確定させたので改正は必要ないと考えている。96条の『3分の2以上』という発議要件も維持すべき。憲法裁判所の新設には私は疑問を持っている」と言う。同じ与党ながら、自公は憲法問題では「同床異夢」といっていい。