1980年代後半から90年代初頭にかけて、不動産は本来価値以上に価格が暴騰しました。しかし、その“バブル”は崩壊し、後遺症があまりにも大きかったためか、少しでも不動産価格が上がると、「すわ、バブル再燃か?」との声が上がるのは、無理のないことかもしれません。

結論を言えば、このときと同じようなバブルはもう起こりません。なぜなら、不動産の評価方法が変わったからです。不動産を評価する方法には、原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つがあります。しかし、バブルのときに用いられていたのは、「取引事例比較法」のみです。

これは当該物件について、近隣の過去に成約した取引価格をもとに算出する方法。「隣が上がればこちらも上がる」という現象が起こりやすく、その逆もまたしかり。不動産価格がとめどなく上がることもあれば、下がることもあるということです。

しかもバブルのときには、不動産の期待利回りが2%だったのに金利は8%。逆ザヤになっても、誰もおかしいとは思いませんでした。1億円で買ったものが、2億円で売れたりしたわけですから。

不動産の評価方法が大きく変わったのは、2000年に入ってからです。01年、J-REIT(不動産投資信託)が証券取引所に上場し、不動産の投資信託ができあがってきたタイミングで、さまざまな不動産金融、不動産ファンドができる条件が整いました。そこで注目されたのは「収益還元法」でした。

これは地代や家賃などの収益を基準に不動産価格に反映するものです。具体的には、不動産への投資金額と、賃貸した場合に予想される年間家賃収入をもとに、当該物件の利回りを算出し、その利回りで年間家賃収入を割り算することで、妥当な投資金額、つまり物件価格を算出するという方法です。取引事例比較法のように暴騰・暴落を引き起こす可能性は極めて少ないといえます。