旅費をごまかしたら懲戒解雇になった

また、ある旅行会社で働く社員が、出向先で合計23万円余りの出張旅費を不正に受給したことを理由に、懲戒解雇された妥当性が争われた裁判事例がある(J社事件 札幌地方裁判所<平17.2.9判決>)

判決は、社員の行為は、就業規則上の「社金を窃取着服した場合」に該当すること、出向先において営業所長という地位にあったこと、不正受給を繰り返していたこと、などの事実を認定したうえで解雇権の乱用とは言えないとして懲戒解雇は有効だと判断した。

この事案の具体内容は、事前に出張経費を受け取っているにもかかわらず、3泊4日の予定を2泊3日に、1泊2日を日帰りに変更、または出張を取りやめたりしたが、会社に変更の申告をしなかったというものだ。実家に宿泊した時に宿泊費を受け取っていたこともあった。

判決文でも、出向会社の社員から営業所長ばかりが明確な理由なく出張しているなどという苦情が寄せられたことから、会社(本社)が原告に対する調査を開始したことが事実認定されている。本社では現場からの声がなければ具体的な状況はなかなか把握できない。

また執筆中に手に取った新聞でも、一部上場企業から子会社に出向して、そこで総務担当部長を務めていた社員が逮捕された記事があった。彼は会社から貸与されたクレジットカードを不正に使い、総額約3億円、キャバクラでの飲食やホステスらへのプレゼントだけで約6300万円あったという。請求書を廃棄しているところを上司に目撃されて不正が発覚したという。当然ながら会社は社員を懲戒解雇にして刑事告訴した。彼は経費の支払い用に社員に貸与されたクレジットカードの管理などを担当。退職者にはカードを返してもらい、解約や破棄処分にするが、約20人分をそのまま使用していたと記事にあった。