“シロクロつける”より“一緒に解決策考える”
前回紹介したここ10数年の土壌汚染紛争の参考事例(http://president.jp/articles/-/20373)から、土壌汚染を巡る公害(環境)紛争としての東京都・豊洲新市場への移転問題解決に、どのような示唆が得られるだろうか。
公調委は公害紛争についてシロクロつける場というよりも、話し合いを通じて一緒に解決策を考えていく場であり、シロクロつける性格が強い責任裁定手続きでも、裁定が出されることよりも、調停という話し合いの場に移行して解決に導くことのほうが多い。その際に鍵となるのが、情報公開と信頼醸成である。
豊洲新市場移転問題についても、小池知事の徹底した情報公開という大方針を踏まえ、ごまかすことなく、これまでの経緯や対策の詳細な内容とその効果、今後考えうる地下水等の汚染とその程度、対策等において誤った点、不十分であった点があればそれを素直に認めるとともに、改善策を提示することが必要である。「これで十分です、安全です、人体に影響はありません」という説明はもう通じないと認識し、どこまでが安全で将来的には何が懸念されるのかといったような丁寧な説明を行うこと、そうしたきめ細やかな対応が必要不可欠である。
しかし、現状では「都政の闇」と「土壌汚染の闇」がその前に立ちはだかっている。
新市場整備に関する意思決定や、計画決定過程についての情報公開が不足、というより“欠如”している中で、説明が二転三転するのみならず、新たな事実が次々と明るみに出てくる。主要施設等の下の空洞にせよ、地下水にせよ、縷々説明は行われているものの、本当の背景や理由が明らかになっていない。
最近の都の説明では、「地下空間は今後、土壌汚染対策が必要になる場合に備えて」とのことのようであるが、もしそうであれば、土壌汚染が完全に除去されていないこと、土壌汚染による影響が今後も想定されるということ、もっと言えば土壌汚染の範囲や程度を把握しきれていないこと、したがって環境影響や食の安全への影響がありうることを認めているようなものである。
そうなれば、「相当汚染されているのではないか」とか「対策が不十分なのではないか」といった懸念を通り越した不信感が都民の間に生まれても不思議はない。