販促費削減と値上げに取り組んだビール会社

消費者の節約志向で販売減続く。活路をどう見出すか
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消費者の節約志向で販売減続く。活路をどう見出すか

流通、日用品と並び、国内産業の代表格なのが食品業界だろう。海外依存度が低いため、自動車や電機のように金融危機の影響をモロに受けたわけではない。

したがって、今回の不況により社員の年収が大きく下がることもない。もともと、日常的に消費されるため、不況になっても強いのは食品業界の特徴でもある。とはいえ、少子高齢化や飲食店需要の落ち込み、原料高などが、ボディーブローのように影響を与えていて、業界の合従連衡は加速している。

乳業界では明治乳業が明治製菓とこの4月に経営統合したほか、森永乳業も森永製菓との統合に向け交渉を進めている。また、雪印乳業は日本ミルクコミュニティと10月に統合する予定で、6年半ぶりに元の総合乳業会社に戻る。

平均年齢を度外視して金額だけでみると、キリンHDなどビール大手4社、日清製粉グループ本社、味の素、日本たばこ産業(JT)、ニチレイ、日本水産が、800万円を超える。

ビール業界でみると、2008年12月期は営業利益ベースで4社とも増益だった。販促費の削減と値上げが寄与した。好業績に連動して、09年の年収はおおむね上がるだろう。

問題は09年の業績予想だ。サントリーを除く3社は、一転して営業減益を見込んでいる。景気後退から飲食店向け需要が落ち込んでいるうえ、原材料高の影響を受けるのが大きい。

特に穀物の原料高は、ビール系飲料だけではなく、多くの食品に関係する。

投機資金が流入して昨年夏まで高騰していた穀物価格だったが、金融危機により資金が引き揚げられ価格は下落した。しかし、世界的に穀物は不足していく傾向だ。「調達への不安はいつもある」(ビール会社社長)状況である。

とりわけ今年は、安定的に調達するため長期契約を結んでいる関係から、昨年の高騰時の価格がしばらく続く見通しでもある。

合従連衡による経営基盤の強化、海外展開などで活路を開いていく動きだ。

※年収はいずれもユーレット(http://www.ullet.com/)のデータをもとに作成。純利益予想は3月25日時点の決算短信、業績予想の修正より。

(ライヴ・アート=図版作成)