「顧客の進化」経営を推進する3つのポイント
(1)優良顧客を獲得するために、企業と商品のブランド力を高める方法を考える
スーパーや量販店に代表される価格訴求型のセルフ販売チャネル向けにつくられる大量生産品は、自家需要を想定し、購入頻度が増えるように安価な価格で販売することが多い。大量生産品は数多くの販路で販売されているので入手しやすいメリットはあるが、ギフトに必要な希少性はなくなる。大量生産メーカーの場合、売り上げ規模は大きいが、付加価値が高くない分、利益率が低くなる傾向がある。
その一方デパートやショッピングセンターの食品売り場、駅や空港の売店、繁華街の路面店などを販路にする企業は、お土産やギフト需要を想定し、包装紙やギフト用パッケージ、手提げ袋などに工夫を凝らして、1000円~3000円の中心価格帯で定価販売を行う。こうしたメーカーは販路の数が限定されるため売り上げ規模には制約があるが、定価販売のため利益率と付加価値が高くなる。
企業と商品のブランド力を高めるには、「定価販売」を前提とし、「付加価値を重視する(安売りしない)販路」で、「希少性(ギフト需要)」を重視した経営を推進することだ。この施策は国内に限らず、海外でも共通する。
(2)優良顧客の知名度と認知度を獲得しておくと、海外での事業展開が容易になる
大量生産を行う大メーカーは顧客の設定が広く、多くの顧客層から選ばれるように取り組む。そのため自家需要を念頭に置き、誰でも手が届く手頃な価格帯の商品が中心となる。
逆に付加価値を重視した販路で定価販売を行う企業は、自社の顧客を絞込み、ブランドイメージを高める方策を取る。選択眼を備えた富裕層などからブランドの評価を獲得できれば、海外での評価の獲得も容易になる。
(3)既存顧客が新規顧客を生み出すギフト需要
ギフトとして選ばれる商品は、「ブランドイメージに代表される付加価値」「商品力」「愛用する顧客イメージ」などが重視され、贈り手の「価値観」や「情報力」が発揮される。ギフトとして選ばれた商品とは、贈り手のこだわりも発揮されているわけだ。
贈り手のこだわりが発揮されたギフト商品を、贈られた人が気に入ると、自分が他の人にギフトとして贈る機会も生まれる。ギフト商品として評価を獲得すると、既存顧客が新規顧客を生み出すという副次的効果がもたらされる。
1953年生まれ。学習院大学法学部卒業。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれたマーケティングのコンサルタント会社、ブレインゲイト代表取締役。著書に『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版社)、『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書(マイナビ 監修)』など多数ある。日経BP社日経BP Marketing Awards(旧名称 日経BP広告賞)の審査委員を務める。