進化を遂げる企業、市場から退場する企業
■日本は世界に誇る長寿企業が存在する国
創業200年以上の企業は世界に5586社(合計41カ国)存在するが、このうち半分以上の3146社が日本に集中している。日本に続いて長寿企業が多いのは、ドイツが837社、オランダ222社、フランス196社だ。これを見ると、日本には世界に誇れる長寿企業が数多く存在していることがわかる。
長寿企業は過去の方法論に固執せず、時代の変遷に応じて自社の経営を柔軟に進化させてきた。
■その一方で創業して20年が経過すると、5割の企業は消滅する
日本で創業してから5年後に生存している企業はおよそ8割(82%)、10年後は7割(70%)、15年後は6割(61%)、20年後に生存するのは5割(52%)に過ぎない(出典:中小企業庁『2011年中小企業白書』)。創業して20年が経過すると、実に5割の企業が消滅している。時代を超えて企業は進化を遂げないと、市場から退場を迫られることになる。
■過去の成功セオリーが通用せず、改良改善という部分最適では問題が解決しない
日本の製造業は長い間「良い製品を安く、大量に生産して、供給する」という概念の下、自社製品に「改良改善を加える部分最適」を続け、これまでは成長を続けることができた。
だが自社製品の価値をいくら高めても、安売りによって価値を破壊する販路で、低価格で売られていては収益が出なくなる。また新興国のメーカーが量産用の生産設備を導入すれば、どこでもつくれる工業製品は低価格化が進み、日本企業の強みは発揮できなくなる。
小売業は「チェーンストア理論」に基づき、「効率化を高めて経費を削減し、NB(ナショナルブランド)を安価に仕入れて低価格で販売」する経営を実践してきた。
量販店を運営する組織小売業は、NBを大量に購入する見返りにメーカーから安く仕入れて、安価に販売してきた。だがこの取り組みはどの小売業も採用しているため、熾烈な安売り競争から脱却できずにいる。
日本を代表する産業として成長してきた家電業界の減速や、組織小売業の中核を占めてきた量販店の構造的問題を見れば、過去の方法論が通用しなくなっていることは誰の目にも明らかだ。