添加物なし「賞味期限60日のどらやき」誕生

人口57万人、鳥取県の「どらやき」の年間生産量が世界一の企業
丸京製菓のどらやき

人口57万4000人の鳥取県、その米子市に1日におよそ40万個、年間1億2000万個のどらやきを生産し、単一工場としては「世界一の生産量」を誇り、社員数74人、売上高26億円7000万円(2014年現在)の製菓メーカーがある。丸京製菓(株)(鷲見浩生代表)だ。

同社は国内では1000店を超えるスーパーに設けられた和菓子コーナー「丸京ショップ」を中心に、生協、コンビニエンスストアなどで商品を販売。海外ではアメリカ、カナダ、中国韓国など世界16カ国に輸出し、海外市場にも積極的に進出している。

菓子問屋の倒産で危機、販路開拓と自社ブランドの事業を開始

同社は製餡(和菓子で使うあんこ)メーカーからスタートし、当時はオーナーと経営陣は別で、どらやきは1980年代末に製造を開始していた。

1994年に売り上げシェアが80%を占める取引先の菓子問屋が倒産し、同社は連鎖倒産の危機に見舞われた。売り上げを上げるため、観光土産品や問屋の下請け商品、スーパーやコンビニエンスストアのPB商品を手掛け、さらに東京エリアの販路開拓にも取り組み、何とかこの事態を乗り越えた。

この危機を契機に、同社はOEMや下請けではなく自社ブランドによる製品開発と新たな販路開拓に着手し、1996年に当時36歳で鷲見氏が社長に就任した。

氷温技術を使って「60日間日持ちするどらやき」を全国販売

同社の「どらやき」は鳥取県で生産しているため物流コストが高く、出荷から販売までのリードタイム(所要時間)が長いことも重なり、全国販売を行えずにいた。また競合する大手製パンメーカーのどらやきに比べ、価格面でも勝てずにいた。

この弱点を克服するため、米子市の社団法人氷温協会が開発した氷温技術(※)を使ったどらやきの開発に取り組んだ。試行錯誤の末に、0度から氷結点までの凍らない温度帯の中で必要な素材を氷温熟成させる技術を活用して、添加物を使わず『60日間日持ちするどらやき』の製品化に成功した。

氷温技術を採用したことで同社のどらやきは、添加物を使わず、コクとうま味が増し、賞味期限が60日の製品に仕上がった。

『60日の賞味期限』が実現したことで、日本全国で販売が可能となり、海外でも販売できる強みが生まれ、同社の飛躍が始まる。

2002年に氷温技術を活用した新工場を建設して翌年から稼動させ、自社ブランドによる経営を加速させていった。

※氷温技術とは
1970年に鳥取県食品加工研究所長だった故山根昭美氏が、二十世紀梨の長期貯蔵の研究中に、保冷庫の温度管理が0℃以下になる失態を犯した。ところが二十世紀梨は凍らず、みずみずしさを保っていた。ここに着目して生まれたのが氷温技術だ。
氷点下の厳寒地に生きるカエルやヘビなどの両生類、魚類は水が凍っても死ぬことはなく、この疑問と二十世紀梨が凍らずみずみずしかった事実に着目し研究した結果、果物などの食品が0℃以下でも凍結せず生き続けることが可能な温度領域を発見する。それが「氷温」だ。
日本では古くから冬の寒い外気を利用した「寒仕込み」や「寒ざらし」といった加工方法で、食材を保存し利用してきた。これは朝晩の温度差が大きく乾燥することで、素材にうま味が増すことを利用している。氷温技術は昔から日本に伝わる自然の保存方法に着目し、冬だけでなく年間を通じて「氷温」が利用できるようにした。