チョコレートの世界が革命的に変わろうとしている。カカオ豆の選別から始まり、製品化まで自分たちで行う工房スタイルのチョコ作りである「Bean to Bar」(豆から板チョコまでという意味)が日本でも本格的に始まろうとしている。その先駆者が渋谷区にMinimalという店を構えるBaceの山下貴嗣社長だ。チョコにかける思いを聞いた。
チョコレートの世界を変える「Bean to Bar」
その板チョコの一かけらを口に入れると、チョコレートの概念が変わる。カカオ豆と砂糖しか使っていないというのに、ドライレーズンのような香りと風味があり、抑えた甘さの中に複雑な味が広がる。豆を粗めに挽いているのでザクッとした食感がある。
渋谷区富ヶ谷にある「Minimal(ミニマル)」という名の店で販売されているこの板チョコは、1000円以上もの価格ながら、店に並ぶとたちまち売り切れ、入手困難なほどの人気だ。
バレンタインやホワイトデーなどのピーク時には100人前後も客が並んだという。現在、24時間3交代制のフル稼働で生産しているが、手作りなので、追いつかない状況だ。Minimalを運営するBace社長の山下貴嗣(31歳)は、こう語る。
「お客様の4~5割は男性です。風味があって、いろいろなお酒と合わせることができるし、普通のチョコのようなべっとりとした甘さがなく、後味がいいのです」
Minimalでは、カカオ豆の産地までこだわり、農園と提携して仕入れた豆から独自にチョコを作っている。豆に合わせて焙煎や挽き方、調合を変えており、1つ1つが手作りだ。こうした新しい製造・販売方法を「Bean to Bar」(ビーン・トゥ・バー)と呼ぶ。Bean(豆)からBar(板チョコ)まで一貫して工房形式で製造するスタイルである。
「Bean to Bar」は2008年頃、アメリカから始まった。カカオ豆を個人で輸入し、ガレージで焙煎しながら作るスタイルで、2009年にはニューヨークの「マスト・ブラザース」という店が大ヒットして広がった。現在ではパリに専門店ができるなど世界に普及し始めた。
その日本における草分けが2014年12月に開業したMinimalである。
「現在、『Bean to Bar』はアメリカでは150~200店、日本では40店ほどです。日本で専門店として営業しているのは10~15店程度でしょうか」と山下。
Minimalでは、3種類の味が基本だ。NUTTYが深めの焙煎で、ベーシックタイプのチョコらしいチョコ。酸味が弱く、食べやすい。FRUITYは焙煎を抑えて果実のようなさわやかな風味があり、酸味が強い。ドライフルーツやシトラス(柑橘)系の香りがする。SAVORYは香り高いチョコで、酸味は中間。ラムやウイスキーなどのお酒に合うという。ヘビーユーザーほどSAVORYを好むそうだ。価格は1枚当たり900~1300円(税引き)である。