下町墨田区にある34人の浜野製作所は、一見すると精密板金などを営むただの町工場にしか見えない。しかし、浜野慶一社長以下、社員は活気にあふれ、取引先は1500社におよび、その技術力は高い評価を受けている。しかも、中小企業やベンチャーの力を引き出すプロジェクトやインキュベーション事業を次々と手がけ、新たな中小企業像を作り出している。
ガレージスミダでベンチャー支援
2015年11月28日、浜野製作所が主催するベンチャー企業との交流会が行われた。参加企業は5社。いま話題となっている遠隔操作できる分身ロボット「OriHime」を開発したオリィ研究所社長の吉藤健太朗や、次世代型電動車椅子「パーソナルモビリティWHILL」を開発したWHILL創業者の内藤淳平がプレゼンテーションを行った。まだ、20代後半~30代前半の若き創業者を取材に在京テレビ局もカメラを回していた。
彼らを物心両面から支援してきたのが、浜野製作所社長の浜野慶一(53歳)である。
浜野は2014年4月に「ガレージスミダ」を設立、スタートアップベンチャーのインキュベーションとして開発・設計から試作まで支援している。吉藤にいたっては、当初、事務所がなかったのため、浜野個人のマンションの一室を事務所兼自宅として借りたほどだ。
「日本から世界に通用するようなベンチャーを育てたいよね。日本の中小企業はそれを支える力を持っているし、もっと中小企業ががんばらないといけませんよ」
賑やかな交流会のパーティー会場で、浜野はうれしそうに語った。
浜野製作所は、精密板金、レーザー加工、金属プレス加工、金型製作などの高い技術力を持ち、量産加工から試作まで対応する。取引企業は1500社にも達し、医療機器部品、半導体関連部品、各種製造装置部品、情報通信機器部品、医療用インプラントパーツ、食品加工装置など幅広い業界で評価を得ている。試作では、大手メーカーの設計部隊にまで入り込み、原理試作から一緒に行うほどの関係を作り上げている。ただの下請け加工業ではない。
2005年にいち早く生産管理ステムを導入し、受注から納品までリアルタイムに進捗状況を管理している。バーコードつき名札をつけた各工程の担当者が指示書の受領および作業完了時にバーコード入力する。
単に生産プロセスを管理するだけでなく、営業はいち早く受注情報を入手し、顧客の開発・設計部門に入り込んで、部品加工の発注前から関わるように努力してきた。
こうした取り組みの結果、最短3日間という短納期を実現、顧客から頼りにされる存在となっている。