不振の理由を探る、顧客を分析する、効果的に販促する……。そんなとき、情報のプロたちは何をするか。2014年、データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーに輝いたJALの渋谷直正氏をはじめ3人が、そのワザを明かしてくれた。
新商品が売れない、既存商品が伸び悩んでいる、リピーターが思うように増えない……。こうした問題が起こったとき、何の分析から始めればいいのか。
分析の専門家であるデータサイエンティストは、いきなりコンピュータを駆使してデータの分析に取りかかるわけではない。「目的や分析対象を絞らずに大量のデータを分析すると、分析のための分析になり、得られる結果も、現場の社員から『そんなこと知ってるよ!』と言われるようなものばかりになる」(JAL Web販売部1to1マーケティンググループ 渋谷直正氏)からだ。では各社はどのように分析をスタートしたのか。それぞれの取り組みを見てみよう。
JALは2013年春頃、すでに提供している商品の中から、収益の強化に繋がるポテンシャルを持った商品を探す取り組みを始めた。新商品を開発するのではなく、既存商品に着目したのは、既存商品の中に、十分な販促や適切なマーケティングを行えば、大きな収益を上げられるものがあるのではないか、という考えからだ。
この取り組みを始めるにあたって、JALはいきなり数値の分析に取り組むことはしなかった。「どの商品にポテンシャルがあるか、現場担当者と徹底的に話し合うことにした」(渋谷氏)のだ。
分析担当者と現場担当者で多くの商品について話し合ううち、海外旅行に行く女性を対象としたパッケージツアー「女子旅@海外」が有力なのではないかという結論に至る。現場担当者が、「メディアで女性だけの旅行が増えていることが取り上げられていたり、実際そうした顧客を現場では見かけるにもかかわらず、『女子旅@海外』がそれほど利用されていない」と感じていたためだ。
そこでJALは、「女子旅@海外」をもっと認知してもらうためにはどうすればいいかを探るべく、分析を開始した。どういった層をターゲットに「女子旅@海外」を訴求すればいいのか、訴求する際の方法はどんなものがいいのか、分析によって発見しようと考えたのだ。