幸運も不運も泳ぎ切った英雄たちの物語
『三国志』は、歴史小説である『三国志演義』と、できるかぎり史実を捉えた『正史三国志』が知られています。『三国志演義』には、史実を混乱させない程度に魅力的なフィクションが加えられていますが、『正史三国志』はそのような点は極めて少なく、基本的には事実を集めて編纂されています。
本連載は歴史小説の演義ではなく、『正史三国志』(ちくま学芸文庫)を元に解説を進めていきます。フィクションのドラマや作られた物語ではなく、幸運も不運も、偶然の出来事も織り込んだうえでの史実にこそ、最高の人生戦略の叡知があると考えられるからです。英雄にも誰にも、三国志の時代に等しく運命の荒波は押し寄せました。しかし、名を残した英雄たちは、運命の浮沈を泳ぎ切り、その人生の中で成果と勝利を手に入れたのです。
そこには、私たちと同じく、運命に直面して現実の中でもがく人間のリアルなドラマが展開されています。そして、敗北から抜け出し最後には勝者となる複数の道筋も描かれているのです。
日本でも数多くの読者を獲得して愛されてきた『三国志』。その中でも史実を集めた正史から、新たな視点で現代に活用できる人生戦略の数々を連載でご紹介していきます。