パイを大きくし、比較を促すメリット

あなたが独立系の事業者で、ウォルマートやバーンズ&ノーブルのような巨大企業が同じ市場に参入してきたとしたら、自分の会社が太刀打ちできるはずがないと心配することだろう。ところが意外なことに、現実は必ずしもそうではない。

たとえばスペシャリティーコーヒーの分野では、スターバックスは独立系コーヒーハウスから「悪の帝国」とみなされている。しかし、業界の調査によると、シアトルの巨人とまともに対決する独立系コーヒーハウスの大多数が、単に生き残っているだけでなく、以前より業績を上げているという。

「スターバックスの登場で、(独立系コーヒーハウスは)気を引き締め、創意工夫し、小回りがきくという自らの長所を活かすようになっている」。こう語るのは、ベリッシモ・コーヒー・インフォグループ(オレゴン州)の社長でコーヒー・コンサルタントのブルース・ミレットだ。ミレットは、スペシャリティーコーヒーはまだ若い産業で、新しい顧客を引き寄せる余地はたっぷりあると説明する。カフェ・ラテをスターバックスで初めて飲んだ人がスペシャリティーコーヒーを気に入れば、近所の独立系コーヒーショップでもそれを飲んでみるだろうし、そちらのほうが気に入るかもしれない。

「一方には競争によって生まれるシナジー効果があり、他方には競争が激しくなりすぎるという問題があって、両者の間にはきわどいバランスがある」と、不動産・小売り関係のコンサルタント会社、ストラティジック・エッジ(ミシガン州)のプリンシパル、ジョアン・E・プリモは言う。「みんなに行き渡るだけの十分なパイがあるかどうかを見極める必要がある」。

つまり、みんなのパイを大きくするようなシェア争いを歓迎するのは賢明だが、成長していないパイに群がってより大きな一切れを得ようとするのはゼロサム・ゲームだということだ。

ペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授デイビッド・J・レイブシュタインによれば、スターバックスは、特定のブランドに対する需要だけでなく、そのカテゴリーの製品・サービスに対する需要を生み出すことでこの部門全体に活力を与えた。