1972年に大学を卒業してから、飲食一筋。とはいえ、人と違うアイデアを思いついて実行しても、すぐにマネされて競争が激化する厳しい世界である。そこで、がむしゃらにオリジナリティを追求することに全力を注いできた。

お客様に支持していただける商売を見つけるコツは何かというと、常に現場に出て自分自身の目でマーケットを見ること。そして、始めた商売のどんな部分をお客様が喜んでくださっているか、あるいは不満に思っているのか、改善点を常に探し続けることである。

だから、すべての店舗の立地選択に私自身が関わるし、オープン日は必ず、ふらりと店を訪れることにしている。店舗スタッフはお客様にまぎれた私に気づかないので、ごく普通のお客様目線で店舗をチェックできる。その結果、ライバルの居酒屋企業が営業利益率5%に満たなかったり、営業赤字に苦しむなか、コンスタントに10%前後の営業利益率をキープすることができているのだと思う。

そうやって革新的な人気業態店をつくったのが、98年から本格的に展開した居酒屋「東方見聞録」だ。カップルのお客様が団体のお客様の隣席になり、がっかりされているのを現場で見て、どうにかできないか思案していた。そこで頭のなかに浮かんだものが、当時流行し始めたカラオケボックスで、「そうか、パーソナルな空間を居酒屋にも用意したらきっと喜んでいただけるはず」と閃いた。

その後、デフレ不況で財布の紐が締まり、家庭回帰の傾向が強まってきていると感じたことで先手を打ったのが、2004年にスタートした低価格ブランドの居酒屋「黄金の蔵ジパング」である。08年9月に世界的なリーマンショックが起きたが、12月にさらに低価格の「金の蔵Jr.」を誕生させ、09年5月から全品300円均一、同年8月には全品270円の店を多数出店し、低価格均一居酒屋ブームの火付け役となった。