「変革はトップダウン」という思い込みが変革を失敗させる。現場は変革に対して、支持と反対が入り混じった複雑な感情を抱く。それを全面的支持に変えるため、何をすべきか。
組織の変革と聞くと中間管理職は、まず判断を保留する。スタンダード・チャータード銀行のグローバル消費者銀行業務部門(シンガポール)のCEO、マイク・デノマは言う。「その後、何か問題の兆しがあれば、喜び勇んで変革の取り組みを攻撃し、ぶち壊す」。
スタンダード・チャータード銀行は、ロンドンに本店を置く伝統ある国際銀行だ。長年にわたり、とくにアジアの新興市場に力を入れてきた。約1000億ドルの資産、3万人前後の従業員を抱え、55カ国以上の国におよそ75支店を構える。デノマは同行で総費用8000万ドルの国際CRM導入プロジェクトの責任者を務めている。プロジェクトは順調に進んでいるが、そのためには中間管理職の支持を得るために細心の注意を払ってきた。
このプロジェクトで最も役立っているツールは、「ユーザビリティー・テスト」だ。業務のやり方を変える提案はすべて、現実に近い形の――本物の第一線の行員が本物の顧客とやりとりしながらの――シミュレーション・テストにかけられる。このテストによって中間管理職は、変革を本格的に実施する前にその「実証ずみの利点を目にする」ことができる、とデノマは言う。
大規模な変革に対する従業員の無理からぬアンビバレンス(賛成と反対が相半ばする気持ち)――ときには全面的な反対――を乗り越えるための単純で型どおりの方法などない。しかし、大きく異なる3つの企業の変革プロジェクトを調べてみると、成功するアプローチに共通する点が見えてくる。