(3)社員の声を聞こう

方向転換に対する支持を勝ち取るには「人間関係がアイデアに劣らず重要だ」と、経営コンサルタントのリック・マウラーは言う。彼は自著『Why Don't You Want What I Want?』で、変革に対する反対を大きく3つに分けている。「ピンとこない」「いやだ」「提案している人間がきらいだ」である。変革案の内容から生まれるものは最初の1つだけで、これは説明によって乗り越えることができる。残りの2つは変革そのものに対する、あるいは変革を唱えている人間に対する感情的な反発だ。こうした反対を乗り越えるためには、じっくり話を聞いて本音を引き出すことが必要になる。「人間関係面に対処することで状況を一変させることができる」とマウラーは言う。

(4)逆の流れを生み出そう

シニア・マネジメントの「致命的な驕り」は、トップダウンの手法だけで変革を進めようとすること、とスタンダード・チャータード銀行のデノマは言う。

家電小売大手のベストバイの変革では、9人の「変革実施チーム」が下から上を動かす最も効果的なツールになった。コンサルタント会社、RHRインターナショナルの変革の専門家で、ベストバイの取り組みを手助けしたエリザベス・ギブソンは言う。「チームのメンバーはトップから4レベル下の人たちで、このチームがシニア・リーダーたちに、彼らの行動がどれほど変革プロセスを妨げているかを直言した。リーダーたちは、それをよく聞いてしかるべく対応した」。

トップダウンとボトムアップという変革のワン・ツー・パンチは、経営コンサルタントのマーク・A・マーフィーの言う「組織を挟み撃ちにする」動きを生む。ハモットの変革のアドバイザーも務めたマーフィーによると、「挟み撃ち」に遭うのは中間管理職だ。変革に対する支持がトップから降りてくるうえに、ボトムからも上がってくるからだ。これは中間管理職がある程度、苦労するということではあるが、それは前向きな苦労だと彼は言う。

中間管理職の失敗は上級管理職が原因

それでもやはり、変革が成功するかどうかの最終的な責任はシニア・マネジメントにある。大半の変革プロジェクトが「中間管理職のところで失敗するが、その原因はシニア・マネジメントだ」と、ロッキード・マーチンのLM-21計画の設計に携わった経営コンサルタント、ロバート・B・ブラハは言う。「シニア・リーダーは、反対のうねりを支持の大うねりに変える適切な方法やインセンティブも見つけなくてはいけない」。

(翻訳=ディプロマット)