予算も、時間も限られている中で、経営陣にアイデアを売り込むのは至難の業だ。それでも、「言い方」次第で勝率が高まる場合がある。彼らが気にしているテーマに結びつけ、「ツボ」にはまるように話すコツとは。

 

企業内で語られる「3つの永遠のテーマ」

自分のアイデアを社内で使われている言葉(レトリック)に合わせて伝えることは重要だ。ミュージシャンには音楽のキーの違いを聴き分ける耳が必要なように、企業の幹部には企業コミュニケーションにおける3つの永遠のテーマ──「イノベーション」「効率」「有効性」──を見分ける能力が必要だ。その能力を使って、自分の会社ではどのテーマが支配的かを見極め、アイデアの伝え方をそれに合わせなくてはいけない。人々の関心の持続時間が短く、予算が厳しい時代には、組織で使われているレトリックのキーに合わせてコミュニケーションを取ることは、自分のアイデアを通したいと思っているすべての人にとって重要な戦術だ。

ナレッジ・マネジメントの価値が問われており、しかも多額の技術投資の時代が過ぎ去ったあとに、ナレッジ・マネジメントプロジェクトを売り込むという挑戦を、この戦略を使って成功させた上級レベルのマネジャーの例をいくつか紹介しよう。

 

支配的なキーを見極めよう

組織内コミュニケーションで使われるレトリックの支配的なキーは、一目瞭然のこともある。連邦航空局の戦略目標は昔から一貫して「安全とシステム効率」だ。上層部もスタッフも局内のコミュニケーションや予算計画で常にこのテーマを力説する。この保守的な組織で新しいアイデアを売り込みたい敏腕スタッフは、ROI(投資収益率)を明確にし、効率を前面に出す形でそれを伝える必要がある。

たとえば、シニア・マネジャーのジオラ・ハダールは、ナレッジ・マネジメントを組織やシステムの非効率の根本原因を除去するツールとしていつも売り込んでいる。「知識を共有し、部門の垣根を超え、技術の無駄な重複を防ぐメリットを前面に出すことで」、ナレッジ・マネジメントを効率に結びつけることができる、とハダールは言う。

主要テーマはいつもこのように歴然としているわけではない。企業幹部は、職場の日常的議論をよく聞いて、手がかりを探さなくてはならないこともある。1例を挙げよう。ブリストル・マイヤーズ・スクイブでは、幹部たちが巨額の技術投資を活かせるアイデアをますます求めるようになっていた。グループ・ディレクターのキャロル・ベカールは、これらの幹部は「効率」を求めているのだとすぐに見て取り、効率をベースにした社内売り込みキャンペーンを構築した。その結果、彼女がすでに試験的に実施していた情報管理のアイデアを会社全体に広げることができた。「われわれの最初の目標は、情報管理をすべてのデスクトップに持ってくることだった」と彼女は言う。次のステップは、そのツールを業務プロセスと統合することだった。