事実、とくに数字は、強力なメッセージである。だが、数字一辺倒のコミュニケーションは往々にして聞き手に届かない。人を動かすためには感情に訴え、イメージを喚起させる必要がある。

データや事実に固執するあまり、リーダーのコミュニケーションの他の2つのチャネル──感情およびシンボル──をなおざりにしてはいないだろうか。リーダーとして人を導いていきたいと思うなら、3つのチャネルのすべてを使って自分のメッセージを伝えなくてはいけない。どの方法でメッセージを受け取るかは人によって異なるからだ。1つのチャネルしか使っていない人──そして自分の言葉が受け手に届いていないことに気づいていない人──が多すぎる。

アメリカ各地の被雇用者、1104人に対する2002年の調査では、回答者の86%が「自分の上司は自分ではコミュニケーションがうまいと思っている」と答えたが、それらの上司が実際に効果的にコミュニケーションをとっていると答えた回答者は17%にすぎなかった。「コミュニケーション・ギャップがあるだろうと予想していたのだが、その予想は間違いだった。あったのはギャップではなく、深い亀裂だった」。こう語るのは、The Leader's Voice: How Your Communication Can Inspire Action and Get Results! でこの調査結果を紹介したボイド・クラークだ。

共著者のロン・クロスランドは、さまざまなメディアで伝えられた何百ものリーダーのメッセージを研究して、社内コミュニケーションのベストプラクティスをランクづけしている。「社員を行動に駆り立てたいなら、そして社員が理解や認識を深め、自分の仕事についての知見や熱意を高める手助けをしたいなら、事実・感情・シンボルの3つのチャネルをすべて使わなくてはいけない」と、トムピーターズ社の副会長を務めているクロスランドは言う。

すべてのチャネルを同程度に使わなくてはいけないということではない。その理由の1つは、感情のチャネルとシンボルのチャネルには重なり合う部分があるということだ。また、事実──とりわけそれまでは社員に知らされていなかった財務データ──には、絶大な威力がある。

だが、事実だけに頼ったのでは失敗は目に見えている。リーダーが1つのチャネルだけで自分の意図を伝えようとすると、受け手は空白部分を自分で埋めることで情報の意味を把握するしかない。ところが、受け手が創造する意味は往々にして話し手が意図したものとは異なる。ここから言えるのは、「他の2つのチャネルを適切なときに適切な形で加えることで、話し手の意図が正しく伝わる可能性はぐんと高まるということだ」と、クラークは言う。

3つのチャネルをすべて使ってコミュニケーションの効果を最大限に高める方法を、以下に紹介しよう。