シンボルの力を利用しよう

シンボルは、感情と理屈を融合させて受け手が瞬時に納得できるコミュニケーションの近道ともいうべきものをつくってくれるので実に強力だ。ターナー・ネットワーク・テレビジョン(TNT)の事例でこれを見ていこう。

「TNTは最初の12年間はブランド戦略をとらず、何でもありのいわゆる『総合娯楽ネットワーク』だった」と、同社の副社長兼ゼネラル・マネジャーのスティーブ・クーニンは語る。

TNTはテッド・ターナーが買収したMGM/UAフィルム・ライブラリーのコンテンツを活用するために1988年に設立され、多種多様な番組を放映して十分な数の視聴者を獲得していた。だが、2000年には200あまりの競合チャネルが登場していて、特定分野に特化していなかったTNTは視聴者による差別化に苦労していた。

そこで同社は、コカ・コーラ社のマーケティング担当重役だったクーニンを迎え入れ、「ドラマならTNT」と言われるチャネルをめざすことにした。

「ドラマのTNT」ブランドを視聴者や広告会社に宣伝する前に、クーニンはまず社内の人間にそれを宣伝する必要があった。

例えば、TNTではエミー賞の社内版ともいうべき「年間ドラミー賞」が今では定着しているが、最初の「最もドラマチックな会議賞」は、大きなお腹を抱えてスタッフ会議に出席し、会議の最中に破水した副社長に贈られた。

新しいブランドに対する経営陣のコミットメントを象徴する出来事として社員に大きなインパクトを与えたのは、高視聴率のプロレス番組の打ち切りをクーニンが認めたことだった。プロレスは「ドラマのTNT」というブランドに合わないというのが理由だった。

TNTのブランド化計画の成果はめざましいものだった。

「シンボルによってメッセージを伝える方法はいくらでもある」とクラークは言う。「セレモニーもあれば、賞やロゴもある。イラストやデザインもあれば、記念品もある。また、比喩はきわめて強力なシンボルになりうる。歌や詩、ジョークや名言──こういったものがみな、きわめて効果的なシンボルとして使えるのだ」。

(翻訳=ディプロマット)