「自分がもらって当然と考える給料より、実際もらえている給料は少ない」という意味ですね。ただ、多くの学者が言っているように、人間というのは自分に甘い生き物です。

――ギクッ!

自分の能力に対する評価は、他人の評価よりも2~3割高いと言われています。「年収500万はもらっていいはず」と思っている人の価値は、年収400万かもしれません。

例えば転職の面接を受けてみて「400万円で」と言われたら、自分の価値が400万円だとわかります。要するに、自分に転職して給料が上がるだけの市場価値があるかどうかです。

――ちょっとそこまでする勇気は……。

自分の価値を評価してくれるサイトもありますよ。「英語ができますか?」とか、「マネジメントの経験はありますか?」といった質問に答えていくと、適正年収がわかるサイトがあります。

私も面白いなと思って、やろうとしたのですが、年齢のところに「67」と入力したら、「対象外です」とはねられました。

――あら、それは適正年収が低く出るよりショックですね。

給料の安さに悩むなら、転職を考えて、現実を知るほうが得るものが大きいと思います。

――転職先を探してダメだったら、諦めるしかないということですか?

いいえ。勉強をして自分の価値を上げればいいのです。

――この年から勉強するといっても……。

勉強に年は関係ありません。しかも、今のあなたが一番若いのですから。なんであれ、勉強したほうが年収が上がる確率が高い。グローバルに見れば、生涯賃金は学歴に比例しています。

海外では、自分の市場価値が低いと思ったら、大学や大学院に行って勉強する人が多い。日本は一度働き始めたら定年まで休まず働くので勉強する機会の乏しい特殊な国です。諸外国では大学入学者に25歳以上の人が占める割合は平均で2割を超えていますが、日本は1.7%しかいません。

僕の知り合いでも、40代で大学に入り直した人が何人かいますよ。ノーベル賞の大村智さんも、山梨大学を出ていったん働いたあと、東京理科大に入られたのです。

――でも、家族もありますし、会社を辞めてというのは難しいです。

会社を辞めなくても、土日だけで卒業できる大学院もあるし、夜間だけの大学院もあります。勉強しようと真剣に思ったらいくらでもできるはずです。

自分が買い叩かれたら、自分の価値を高めるしかない。頑張ってください。

Answer:勉強して、自分の市場価値を上げましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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