日本の社会保障はOECD(経済協力開発機構)諸国の平均より上です。データを見ると、先進34カ国中、上から14番目(対GDP比)。「日本の社会保障は、世界の中でも充実している」という事実を、まずはきちんと理解してください。
――日本が特に「福祉が充実している」という感覚はなかったですが。
でも、数字が示すのはそういうことです。「日本は先進国の中でも幸せなほうだ」と。
――今はそうだとしても、これからは少子化のせいで、制度が続かないんじゃないですか?
団塊世代の200万人超が退職する一方で、新社会人は百数十万人。差し引きで考えれば「日本全体で社会保障を支える労働力が減っていくことが心配」ということですね。
でもこの考え方を変えてみてください。日本は将来、人手不足によって「高齢者でも働き口が見つけやすい国になる」ということでもあります。つまり年齢を重ねても健康で働けるのであれば、あまり心配はない。
アングロサクソン系諸国では、年齢フリーで、求職の際、年齢を尋ねてはいけないことになっています。今後、日本もその方向に向かうでしょう。
――なるほど。「定年になったらもう働けない」と思い込むから、その後の老後資金が心配になるんですね。
その通りです。
――このところ「老後破産」とか「下流老人」という言葉をよく見るので、心配になってしまいました。
いたずらに不安を煽ってビジネスをしている人がたくさんいる、ということです。
老後に一番心配しなければならないのは「お金」よりも「健康」です。病気になったら働きたくても働けませんから。自分が健康であることが、一番の老後対策です。
ですから、「今のうちから老後資金を貯めておかなければ」と衣食住をケチったりするようなことは、愚の骨頂だと思います。体にいいものを食べて、たくさん寝て、健康のためにストレスをためない生活をすることです。
――そういえば僕は、仕事でストレスをためて、老後の心配でストレスをためて……、健康に悪いことばかりしている気がします。
より充実した老後を送りたいと思うなら、まず自分の健康のために投資をすることが大事です。
なお、個人がお金を貯める一番いい方法は長期投資だと思います。今の金利情勢であれば、おすすめは投資信託です。毎月決まった金額で、投資信託を買い続けていけば、ドル・コスト平均法の投資ができる。格付け会社が投資信託の格付けをやっていますから、それらを参考に投資するといいと思います。
Answer:健康であることが、老後に対する一番の備えです
ライフネット生命保険会長兼CEO
1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。