不老長寿が、とうとう実現できる!そんな予感をさせる研究成果が挙がり始めた。どんどん進む「老化の原因」の特定で、「加齢」はいつしか「病気」の一つに分類されるという。
60歳の体が30歳になる
今までは卵子の老化は止められないといわれていましたが、これからは逆行させることができます。まず女性から卵子を数個取ります。幹細胞から、細胞のエネルギー源であるミトコンドリアを取り出し、それを精子と一緒に卵子に注入します。そうするとはるかに健康な受精卵ができると考えています。これはカナダ、中東、イギリスなど多くの国・地域で行われており、日本でも始まっています。
老女から古い卵子を取り出して、それを若返らせることもできます。そうするとその卵子と精子で子供をつくることができます。さらにDNAを改変することができれば、疾患がゼロの受精卵をつくることができます。これまで空想小説の世界だと考えられてきたことが現実になる。
今研究しているもうひとつの分子は非常に新しい分子で、レスベラトロールよりも寿命を延ばす能力が高いものです。NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドの略で、サーチュイン遺伝子を活性化させる化学物質)という物質のレベルを上げる役割をします。この研究は現在、今井眞一郎氏(現ワシントン大学セントルイス校)と協力して行っています。
NADは老化とともに減少します。私は今45歳ですが、NADは若いときの半分になっています。ですから、NADのレベルを上げると若返ると考えますが、今井氏も同じ考えです。我々はMetrobiotechというベンチャー企業を立ち上げ、マウスですでに若返りに成功しています。臨床試験も始まる予定です。
NADのレベルを上げると体全体が若返ります。これをマウスに投与すると、人間で言えば60歳の体が30歳の体になります。クレイジーに聞こえますが、最も権威のある科学誌の一つCellに掲載されました。
さらにこのラボで研究しているのはバイオインフォマティクス(生命情報科学。遺伝子やタンパク質のビッグデータをコンピュータにより分析する研究分野)です。