ヒトとサルとの比較から、すでにいくつかの新しい遺伝子を発見しています。私のラボには20人いますが、シドニーには10人、さきほど言ったベンチャー企業では何百人もの人が研究しています。ですから、毎日何かが起きています。

若返りをするには何か代償を払わなければならないと考える人もいますが、それはないと思います。未だ明らかにされていないことが多いので今の段階では、完全に若返るということはありません。ですが、体がまるで若返ったように行動させるスイッチが複数見つかっていますし、将来もっと完全な若返りができるようになると思います。筋肉の若返りについては1年間研究しましたが、筋肉の老化を完全に逆行させることができました。それはそれほど難しいことではありません。

どっちのマウスが若く見えるか

マウスでは老化を早めたり、遅らせたりすることができます。このマウス(写真を参照)を見てください。AとBでどちらが若いと思いますか?

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AとB若いマウスはどっち?(写真=時事通信フォト)

実は同年齢です。DNAはまったく同じですが、Aのマウスは老化を早めたのです。どの遺伝子のスイッチをオンにして、どれをオフにしたら老化を早めることができるかわかっています。現在は、老化を逆行させる、つまり若返らせようとしているところです。

元々老化はDNAの損傷が原因であると考えられていますが、このマウスに起こっていることはDNAに損傷を受けたことによるものではないと我々は考えています。我々が考える老化の原因は、「細胞がDNAをどう読むか」が変化してしまうことです。いわゆるエピジェネティクス(環境などの条件が変わることで、様々な遺伝子のオン・オフが調節されること)です。

例えば、自分たちが若いときに、完璧なコックさん(=DNAを正しく読む細胞)の料理をおいしく食べます。それが年をとるにつれて、そのコックさんも年をとり、同じようにつくることができなくなります。そうすると次のコックさん(=代わりに生まれた細胞)がつくることになりますが、完璧なコックさんが書き残したレシピ(=老化しないDNAの読み方)に従えば、同じようにつくることができます。細胞がDNAを正しく読めば、細胞が若返るということです。