政策減税による傾斜的減税が隠れた補助金に
経済界は、日本の法人税が高いと嘆いているが、高いのは法定税率であって、実際の税負担は決して高くなく、むしろ非常に軽いということは本誌15年4月13日号で述べた。法人企業のうち黒字決算で税金を納めている有所得法人は全体の31.83%にすぎないが、その全体をトータルで見ても、実際に負担している割合である「実効税負担率」(企業利益に対する納税額)は、法定税率38.01%(13年・14年各3月期)に対し、その約60%である22.72%にすぎない。
法人税において、法定税率と実効税負担率との間に著しい差があるのは、課税ベースである課税所得金額が著しく侵食され、大きく欠落しているからだ。
その侵食の根源は、日本税制の伏魔殿ともいうべき「租税特別措置」の政策減税による「大企業優遇税制」であり、かつ法人税制じたいに内在する数多くの欠陥に拠るものなのだ。
特に、特定の政策のために集中的に講じられる「政策税制」による傾斜的減税が、租税特別措置での隠れた補助金となっている。これが実に83項目に及んでいる。表立って下りる補助金と違って、国会で審議対象にならないだけでなく、役人の天下りが付いてこないのが利点だ。これらが特定の産業や大企業への特権的優遇税制として既得権益化、ひいては課税の空洞化を生んでいる。
法人税関係の租税特別措置の適用による減税相当額を算出するには、752ページに及ぶ財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(15年2月国会提出)」を総ざらいする必要があった。財務省に問い合わせて、これを理解している担当者を数日かけて“発掘”。幾度も議論を重ねた。あまりに煩雑な作業がたたり、入院の憂き目にもあったが、最終的に83項目を8項目にカテゴリー分けした(図1)。
一例を挙げよう。租税特別措置のうち、減税相当額の最も大きい種別が税額控除(図1最上段)。その中で目立っているのが、いわゆる研究開発税制である「試験研究を行った場合の法人税額の特別控除」である。企業が支出した試験研究費の8~10%(特別試験研究費は12%)を、納付する法人税額から差し引ける仕組みで、年々拡大されている。最近では同じ税額控除の中で、生産性向上設備促進税制、所得拡大促進税制などが拡大されている。
すると、減税相当額は12年度で1兆3218億円、さらに13年度は1兆8867億円に上るとわかった。さらに、その減税相当額を企業の資本金額ごとに整理したのが図2である。大企業に偏った特別措置によって、これだけの巨額の税収が失われているのだ。