入れ替わる選手と7連覇
1996年からチームを率い、20年目を迎えた。その節目の年にラグビー界の金字塔ともいえる『7連覇』を達成した。7年連続の大学日本一。学生の手による胴上げで7度、宙を舞った帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督は言葉に万感の思いを込めた。
「ホッとしています。久々に厳しい決勝戦でした。重みのあるゲームを体感できて、勝利できたことをとてもうれしく思います」
57歳。もはや名監督のひとりである。勝負師であり、教育者でもある。目はコワく、でも優しい。その鋭い視線はすべてを見つめているようなのだ。学生のプレーを。人間としての成長を。学生の将来を。
社会人の新日鉄釜石(78~84年度)、神戸製鋼(88~94年度)と並ぶ7連覇とはいえ、学生は意味合いがちがう。毎年、メンバーが入れ替わる学生にあって、連覇は至難の業なのだ。若者を育てながら勝たないといけない。
「結果としての連覇はうれしいですけど、釜石や神戸製鋼とは違います。学生は夢を持つことがエネルギーとなります。4年間、あるいは1年間を、学生が高い目標を持って、きちっと努力していくことが大事なんです。そうやって社会で生きる力を身に付けてもらいたいのです」
そうなのだ。長い目で見た場合、優勝することが山のてっぺんではない。学生の人生を考えたら、卒業後の人生の方が長くなる。未来につながるものを積み上げていく機会として、ラグビーがあり、出会いがあり、日々の鍛錬があるのだろう。