私生活の規律も「チーム文化」

帝京大ラグビー部のクラブハウスを覗くと、その玄関の綺麗さと学生の礼儀のよさに驚く。クツはきれいに並び、泥も落ちていない。だれもが気持ちいい挨拶をしてくれる。

それがラグビーの勝負に関係あるのだろうか。そういぶかしがる人もいるかもしれないけれど、これは断言できる。ある。絶対に。

帝京大の7連覇は、私生活の規律と、努力の継続というチームの文化があればこそである。いかに潤沢な環境や学校の支援、学生の才能があっても、岩出監督の指導力とチーム文化がなければ水泡に帰す。

連覇の苦労は?

「守りに入ったら苦しい。居心地の良さとか、チャレンジする気持ちがなくなったらしんどいですよ。エアコンで(部屋の中が)あったかい空気になったら、そこを守りたくなるでしょ。でも改善しないと。挑戦心を持たないと、イノベーションは起こせません」

では、今季、プラスしたものは?

「質ですよ、質。4年生の活動の質とか、上級生の質をもっと上げようと思って努力してきました。コミュニケーションもです。グラウンドの中も外も、4年生ががんばってくれると、全体的に質が上がってきます。みんなのがんばりも違ってきますよ」

チームのスローガンはずっと変わらず、「エンジョイとチームワーク」である。約150人の部員の笑顔は、そのスローガンの実践ゆえだろう。別れ際、「7連覇の喜びは?」ともう一度、聞いた。

岩出監督はこちらの肩を軽くたたき、顔をくしゃくしゃにしたのだった。

「うれしくないわけがないじゃないですか」

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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