流 大(帝京大学ラグビー部主将)
身長166cmの小さなからだが仲間の手で宙に舞った。ラグビーの全国大学選手権決勝(10日)。帝京大が史上最多得点差で筑波大を圧倒し、前人未到の6連覇を果たした。
主将の流大は顔をくしゃくしゃにする。名前の大は「ゆたか」と読む。「大きく豊かに育て」との親の思いが込められている。
「142人の部員の思いを背負って、1年間やってきたことをやり切りました。優勝できて、試合に出られなかった部員の笑顔を見られたことが、僕は一番うれしく思います」
常勝チームの主将は重責を担う。チーム作りで一番大事な夏合宿、早大戦の前だった。部員の士気が落ち、流主将は泣いた。学生だけのミーティングを開き、「一日一日、全力でやり切ろう」と奮起を促した。
チームは変わった。その直後の早大戦に快勝し、不安が払しょくされた。激しいポジション争いがチームのスタンダードを押し上げ、12月、準レギュラー選手編成のチームで挑む関東ジュニア選手権でも圧倒的な強さで優勝した。ラグビー部を引っ張るのは33人の4年生。その先頭に立つのが流主将である。
「小さいことを大事にしよう」がモットー。流主将が説明する。「例えばトイレのスリッパを並べることや、道のゴミを拾うことを、一番大事にしています。見えないところの努力があって初めて、チームはよくなっていく。もちろん練習も同じです」
福岡県久留米市の出身。小学校3年で地元のラグビースクールに入り、熊本・荒尾高校では主将を務めた。そのリーダーシップは帝京大学の岩出雅之監督のお墨付きで、主将になると、毎朝30分のミーティングを重ねてきた。性格は誠実、かつ真面目。
「いい人間になろう」と、流主将や部員たちはよく、口にする。いいラグビー選手というだけでなく、社会でも通用する人間になろうということである。
気分転換は? と聞けば、真顔で「自分の部屋を掃除することです」という。好物が「久留米ラーメン、もつ鍋」。それでも、からだ作りのため、食事の栄養のバランスには細心の注意をはらう。
チームとしては、次は2月の日本選手権で「打倒トップリーグ」に挑む。卒業後は強豪のサントリーに入社する。ことしの日本代表候補からは漏れたが、夢は『2019年ワールドカップ日本大会』出場である。
「(代表候補漏れは)僕は当然だと思います。まだまだ力不足。また(代表候補合宿に)呼ばれるよう頑張りたい。努力は必ず、報われると思っています」
いい人間だ。ガッツのかたまりのスクラムハーフ。22歳。語るべき男が語れば、つい応援したくなるのである。