なぜ忙しさに追われる毎日なのだろう。ちょっと余裕ができても、ダラダラと時間を使ってしまうのはどうしてだろう。

おそらく時間の重要性を頭ではわかっていても、時間をどう使えばいいかが明確ではないからだろう。そもそも、人間はなまけもの。これがしたいという目標、こんな人生を送りたいというベクトルが明確でない限り、効率的な時間の使い方はなかなか身につけられないはずだ。

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▼水平線から昇り、沈んでいく太陽の軌跡に人生をなぞらえるとすれば……
[1]今、自分はどのあたりにいると思いますか?
[2]もし、この軌跡のうちのある時期に戻れるとするなら、どの辺に戻りたいですか?
[3]そこに戻りたい理由は何ですか?
[4]今以降の人生とキャリアを歩むうえでの抱負を一言で述べてください。

そこで、まずは上の課題に取り組んでみよう。日の出から日没まで、人生を太陽の動きになぞらえると、今、自分はどのあたりだと思うか?

経営学のなかでもモチベーション、リーダーシップ、キャリアなど、組織における人間の行動や心理にかかわる研究に取り組む神戸大学大学院の金井壽宏教授は言う。

「自分は今、どのあたりにいるのか。人生で光り輝いていた時期はいつか? 自分がいくつまで生きられるかはわらないので、平均寿命よりは余分に生きたいと思うなら、40歳から45歳が、人生の真ん中、つまり中年と意識する時期です。40代半ばを過ぎると、生きている間にやりたいことはなにかと、人生の終わりから逆算して、イメージできるようになります」

人生半ばというと、どうしても衰えることを感じてしまうが、そうではないと金井教授は続ける。

「正午を過ぎると、人生下り坂のような気になりますが、そうではなく、午前中は日陰だったところに午後には日が当たるように、午前中、影になってしまったものを統合していくのが人生の午後の発達課題だと心理学者のユングも言っています。むしろ40代半ばから、真の個性化は始まる。人生が有限であることを前提に逆算して夢を実現していくと考えれば、時間を上手に使いたくなるはずです」

大人になって現実の忙しさにかまけていると、時間はどんどん過ぎてしまう。時間の上手な使い方を身につけるには、まずは残り時間に気づくことから始まるのだ。

神戸大学大学院経営学研究科教授
金井壽宏
(かない・としひろ)
1954年生まれ。京都大学教育学部卒業。組織のなかで生じる人間にかかわる問題に対して、個人にとっても組織にとっても創造的な活動を促進するという視点で様々な研究を行っている。
(構成=遠藤 成、大塚常好)
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