働き方と幸福の関係は人によって異なる

目覚めているときに仕事が占める時間の割合を考えると、人生とはある意味、働くことでもある。

日本語の「働く」という言葉は、活動(Work)と苦役(Labor)というプラスとマイナスの2つのイメージを持っている。金のために苦労して働き、稼いだ金で生きるという面もあるが、働いて成し遂げたことで得られる喜びもあるわけで、仕事は単純に苦役ではない。いずれにしろ仕事(Business)という言葉がBusyから発生したように、忙しいことに変わりはない。

「キャリア・アンカー」という言葉を耳にしたことがあるだろう。仕事に取り組むうえで、自分がもっとも重きを置く心の拠りどころは何かを示す言葉だ。アメリカの心理学者エドガー・シャインはこれを8つのタイプに分けた。

「自分の過去を振り返って、これは譲れない、という仕事に対しての心の置きどころはなにか、人生の節目節目で、振り返ってみることも大切です」と神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は言う。

本来なら、診断テストで分析するものなのだが、ここでは結果の8タイプだけを挙げておく。1~8で、自分が仕事に重きを置いている順番に並べてみよう。自分が仕事に何を求めているかが、見えてくるはずだ。

満足する働き方を知る

キャリア・アンカーが示すものは、単純に向いている業種を示すものではない。仕事をするうえで当人が大切にしているものなので、人を救う消防士、医者、弁護士だから社会型・貢献型というわけではなく、医者でもスペシャリスト型もいれば、ゼネラルマネジャー型の人もいる。

また、タイプに優劣はない。将来的に安定した雇用を望む保障・安全型は、守りに入って挑戦的でない、そんな人生で面白いのか? とマイナスイメージを抱く人もいるが、誰でもある程度の安定があってこそ力を発揮できるもの。

働くことと幸福の関係の価値観はいくつも種類があることを知り、そして、他人はまた違う価値観を持っていることを受け入れることも大切だ。

まずは自分の仕事を振り返り、自分がどのキャリア・アンカーを軸にしているのかを見つけ、自分の仕事への価値観を明確にしてみよう。どんな時間の使い方をすれば自分が満足するのか、方向性が見えてくるはずだ。