男性の平均寿命も80歳近い現在、先は長いと思うだろうが、アクティブに活動できる健康寿命は70歳前後。まずは、それまでにやりたいことの計画を立てたい。
しかし、子どもを育て、家のローンを払い、場合によっては親の面倒を見たりと、40~50代は家族のことで忙しい。仕事でも中間管理職的な立場になる年齢なので、これまた部下と上司の板挟みになりストレスが溜まりがち。人によっては、培った技術や人脈を基に独立を目指す人もいるだろう。40~50代は重い責任と厳しいプレッシャーにもまれる時期だ。
「他の世代以上に元気な人と疲れた人に明確に2分化する時期でもあります。この時期をどう過ごすかで、人生は決まってくるといってもいい」と神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏は指摘する。
「成人前期までは、俺が俺がのイケイケモードになりがちですが、若い世代の面倒をきちんと見ることが自分の成長にも有意義だと、心から感じることができたとき、その人は成熟期を真にクリアしたといえるでしょう」
複雑なミドルのココロ
「かつての自分のベストジョブを振り返り、若い世代を育むなかで、継続して意味のある創造的なものを生みだすためにはどうすればよいのか、内省してみることをお勧めします」
40~50代ならではのメンタルの特徴に、乗り越えなければいけない4つの危機と呼ばれるものがある。この対処法を知っておくことも、残りの人生を有意義にする役に立つはずだ。
「まず〈若さと老い〉。それぞれに長所短所があり、それがせめぎあう時期です。まだ残っている若さのよい部分と、迫りくる老いのよいところを統合できれば、実りのある時期が過ごせます。
次に〈男らしさと女らしさ〉。若いうちは競争に勝つ、泣き言を言わないといった男らしさモードでも、ミドルになったら相手を慈しみ育む女らしさモードを自然に持てるかどうかが問われます。
3番目は〈破壊と創造〉。若いときは何かを破壊することに躍起になりがちですが、成熟期は破壊以上のエネルギーを創造に向け、両者の緊張感に折り合いをつける。知らないうちに人を傷つけていたといったことがないように自覚的になりたいものです。
最後に〈愛着と分離〉。大切にしている家族、仲間、会社といったものを除いた自分を考える。孤独に自分を見つめることも人の成長に関わってきます」
金井壽宏(かない・としひろ)
1954年生まれ。京都大学教育学部卒業。組織のなかで生じる人間にかかわる問題に対して、個人にとっても組織にとっても創造的な活動を促進するという視点で様々な研究を行っている。