9月から米動画配信大手ネットフリックスが日本でのサービスを始めるなど、テレビ業界を取り巻く環境は大きく変化しつつある。

ここ数年、業績そのものは悪くない。2000年代にインターネットが普及して、ネット広告が伸びてテレビ広告費を圧迫した時期もあったが、テレビ広告を減らした結果、販売に影響が出た企業が10年ごろからテレビ広告を再評価し始め、企業ブランディングにおいては「テレビ広告+ネット広告」が最適解とされた。

さらにリーマンショックを受けて収益構造が見直され、高コスト体質からの脱却が進んだことも大きい。

しかし、今までのネット広告はテキストが主だったが、最近は動画広告も増加してきた。広告費の伸び率も、昨年は2ケタを回復するなど、再びネット広告がテレビ広告を侵食し始めた可能性がある。

その大きな要因はやはりスマートフォン。人々の余暇時間がスマホに消費されるようになりテレビへの接触時間が減ってきている。テレビ業界は、今もテレビがナンバーワンメディアと自負しているが、スマホを含めたネット対応を真剣に考えないと、今後は厳しくなるだろう。

もちろん、各社もただ手をこまねいているわけではない。例えばフジテレビはネットフリックスに『テラスハウス』などのコンテンツ提供を始めたし、日本テレビも米動画配信Huluの日本事業を買収した。放送した番組をネットで配信する“見逃し配信”サイトなども各社展開し始めた。遅ればせながら、各社危機感を持ってネット対応を進めている。

不動産事業などの経営多角化や一般家庭の視聴環境が整ってきたBS放送など、まだまだテレビ局の事業に可能性は残されている。『半沢直樹』や『家政婦のミタ』のような、力のあるコンテンツを制作しながら、テレビ以外のディスプレイにどう配信していくかがポイントだろう。

(構成=衣谷 康)
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