出身大学が一流企業の採用に大きな影響を与えるのは今も昔も変わりない。偏差値の高い学生は入社後、本当に活躍しているのか。入社後の昇進・昇格、働く意欲をを調べた会社があるという。入社5年目調査で判明した驚きの事実とは……。『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著 プレジデント社)より、「採用・入社」の最新事情をお届けする。
偏差値の高い学生は会社で活躍しているか?
昔から変わらない新卒選考の基準の1つになっているのがどんな学校を出たかという「学校歴」です。明治30年代に発行された雑誌にも、就職に有利な学校として、帝国大学や官立の高等商業学校(一橋大など)、高等工業学校(東工大など)、私学では早稲田大、慶應義塾大が掲載されているほどです。
しかし、偏差値が高い一流大学の出身者であれば、入社後も本当に活躍してくれるのでしょうか。こんな疑問を抱いている人事担当者も少なくありません。
じつはこれを確かめようと密かにある“実験”をした会社があります。1社は大手精密企業。東大卒と高校卒の新入社員を数名ずつ同じ部署に配属し、同じ仕事を担当させたそうです。同社の人事部長はこう言います。
「業務遂行能力の評価はほぼ変わりませんでした。でも高卒者のほうがやや点数が高いという結果です。入社2年目になると能力差が出るのではと思っていましたが、残念ながら同じ結果でした」
3年目は大卒と高卒の配属先が異なるので比較は無理でしたが、この実験を機に選考では、今まで以上に人物重視の選考に切り替えたそうです。
入社5年目の活躍度を調査したのがIT企業です。まず同社で実際に活躍している社員が共通に持つ高い能力を調べたところ「意欲の高さ」と「発想の豊かさ」の2つでした。この2つを指標に入社5年目の学歴、学校歴別に社員を調査したそうです。じつに驚くべき結果が出たそうです。
同社の人事部長はこう言います。
「当社は大卒以外に高校、専門学校卒も採用しています。それを含めた全員を調べたのですが、最も評価が高かったのは高校、専門学校卒だったのです。次に東大、京大や早慶クラス、最も低かったのが明治、中央などのMARCHクラスでした。学歴に関してはまったくの逆の結果になりました」
これは特殊な現象なのでしょうか。両社の調査結果を見れば、何も大卒を採るより優秀な高卒を採用したほうがいいということになります。さて、皆さんはこの結果をどうご覧になりますか。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。