上位校ほど昇進ルートの切符を手に入れやすい
出身大学が一流企業の採用に大きな影響を与えるのは昔も今も変わりません。最近は事実上の第1次選考も兼ねる企業説明会の参加者募集のサイトを偏差値上位校に優先的にオープンし、時間差を使って絞り込む“学歴フィルター”を使う場合もあります。
では出身大学は入社後の昇進にどのような影響を与えるのでしょうか。毎年百数十人程度しか採用しない総合商社の人事担当者はこう言います。
「出身大学は採用の際にはこれといった指標がないから見ていますが、入社後は学歴を指標にしなくても日々の仕事で評価できます。有名大学であっても結果を出さない社員は当然出世しません。東大卒もしかりです」
しかし、その一方でグローバル競争に打ち勝つために経営幹部の若返りや次代の経営層の早期選抜育成の動きが始まっています。流通業では経営幹部候補人材として採用学生から一定数を選抜し、特別のコースを歩ませています。人事部長はこう言います。
「採用した学生の中からこれはと思う優秀な学生を10人程度選抜していますが、結果的に東大、京大、一橋大、慶大など銘柄大学に限られます。もちろん東大や慶大出身でも採用者の全員ではなくその一部です。多くの社員は店舗勤務をさせますが、彼らは最初から別会社の経営企画部門で働かせるとともに教育も実施します。同期の配属先はバラバラなので誰が選ばれて、選ばれていないかはわかりません。選抜組はその後、本社やグループ大手の経営企画部門で働きながら経営幹部として養成していきます」
選抜の基準は採用試験の高得点組に加えて、マネジメントの資質があるかどうかをチェックしているそうです。しかし、どうしても採用時の印象に左右されやすく、東大、一橋大、早慶など上位校が多くなる傾向にあると言います。もちろん出世が約束されているわけではありません。人事部長は「配属先での仕事ぶりを常にチェックしており、途中の評価が低ければふるい落とされて、普通の社員と同じような管理下に入ることになる」と言います。
昇進は約束されないにしても上位校の出身者ほど昇進ルートの切符を手に入れやすいということは言えます。学歴による入社選抜は今後も広がる可能性もあります。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。