HCが描く未来図

ジョーンズHCは2003年W杯では母国オーストラリア代表を率いて準優勝、07年W杯では南アフリカ代表のスタッフとして優勝を経験した。W杯でのチーム作りは熟知している。ここから日本代表の戦力が大幅アップすることはあり得ない。ただチームがひとつになることで、チームがぐんと強くなることはありうる。

さて、ジョーンズHCの描くW杯ストーリーは何だろう。そう聞けば、「頭はいろんなストーリーでいっぱいです」と笑った。

「ワールドカップは大きくてパワフルなチームと対戦します。運動量と賢さで勝ることが必要です。そして最後に必要となってくるのが、相手よりも情熱を持って戦うことです。このジャパンほど努力してきたチームは他にはない。それは事実です。あとはしっかりとフィールドで発揮する自信を持つだけです」

そこでひと呼吸し、小さく息を吐いた。日本の初戦は9月19日の南アフリカ戦。世界ランク2位の強豪国である。

「たぶん小雨が降っているでしょう。イングランドはつねに雨が降っているので……。でも小雨の中でもジャパンは準備万端、チャレンジします。そして……」

ジョーンズHCは続くコトバを飲み込んだ。きっと、ジョーンズHCの頭には、死闘の末、喜びを爆発させる選手たちの姿が映っているのかもしれない。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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