「ダブルエース」擁するチームづくり

生誕100年の夏の甲子園大会を制したのは、“2枚看板”の東海大相模高だった。もちろん指導者の情熱、選手の努力の成せる業だが、チームづくりの勝利といってもいいのではないか。試合を終え、並んで校歌を歌う小笠原慎之介くんと吉田凌くんの笑顔を見ながら、そうつくづく思った。

「肩、ひじは消耗品みたいなものですから」と、元プロ野球投手の友は言う。このところ話題となっている甲子園投手の「投げ過ぎ問題」を意識しての発言だろう。東海大相模にチームづくりの理想像を重ね合わせた。

「指導者にとっては、いいエースをひとりつくるのではなく、いいピッチャーを2枚育てることが大事なのではないでしょうか。この優勝が、日本の高校野球界が変わっていくきっかけとなってほしい。サガミ(東海大相模)が優勝できたのは、小笠原くん、吉田くんがけがすることなく、3年間、投げられたからだと思います」

速球で押す左腕の小笠原くんと、変化球が武器の右腕の吉田くん。ふたりは切磋琢磨しながら力を高め合い、甲子園では小笠原くんが決勝戦を161球で完投した。小笠原くんは3回戦に次ぐ、先発だった。あとの試合は先発の吉田くんを救援していた。いわば、ふたりで5試合を投げ分けた格好である。

小笠原くんは決勝戦の9回、仙台育英のエースの佐藤世那くんから決勝アーチを放った。佐藤くんは甲子園の6試合をほとんどひとりで投げ抜き、計680球もの投球をした。フォークを武器とする好投手が最後に力尽きた。東北勢初の優勝は成らなかった。