いまやツイッターのフォロワー数27万人。世界陸上のメダリストで、ベストセラー『諦める力』の著者、為末大さんが、世界の問題から身近な問題まで、「納得できない!」「許せない!」「諦められない!」問題に答えます。(お悩みの募集は締め切りました)。
納得できない話です。学生時代の卒業アルバムについてです。好き好んでこの顔立ちに生まれたわけではないのに、写真を撮られて学年中の友だちに配られることが納得できません。いまでも中学生時代の同級生が「コイツ、ブッサイクな顔してんなー」と笑っていると思うと、イライラして親に八つ当たりしてしまいます。(男性・アルバイト・23歳)
これはなんとなくわかるような気がします。学校の友だちなんて仲がいい人も悪い人もいるのに、自分の納得していない写真が「素敵な思い出の一部」としてパッケージ化されて、不特定多数に配られることへの違和感ですね。
中学生時代はホルモンの関係で外見が大きく変わることもあり「黒歴史」として封印したい人も少なからずいるでしょう。そういう自分にとって思い返したくない時代の写真をシェアされて、永久に残ってしまうのは確かに愉快なことではありません。いざ事件が起これば知らないうちに広く世に出てしまう可能性さえあります。
正攻法で答えるとしたら、「他人はあなたが意識するほどあなたのことを見ているわけではありませんよ」ということなのでしょうが、この方が憤っておられるのは仲が良くもない人間に写真を見られるのが嫌だという以上に、その写真がいまの自分のセルフイメージとズレているという点だと思います。「いまの私はここまでぶさいくではない」という思いがあるのではないでしょうか。
僕の仕事は見られてなんぼのところもありますが、最初のころはこのズレみたいなものはけっこう感じていました。ある日、「ああ、もう僕はパンダなんだ」と思ってから急に楽になりました。自分を対象化できたんですね。本当の自分とみられている自分が一致しすぎているとそれがズレることにしんどさを感じます。そもそもズレているんだというふうに認識できるようになったら楽になりました。