東京・中目黒。近年、ファッション業界人が通う個性的で通好みの店が軒を連ね、芸能人も普通にそこらを歩く「イケてる」街の筆頭だ。目黒川沿いの見事な桜並木も有名で、お花見の季節には老若男女でにぎわう。

渋谷から東急東横線で3~4分の好立地。当然、物件価格も高く、新築分譲マンションで70平方メートルほどなら7000万円は下らない。となれば、中目黒住民はさぞやキラキラした日常を送っていると思いきや、「いやいや、以前から中目黒に住む住民たちは、むしろ庶民的で普通の暮らしぶりなんですよ」と話すのは、会社役員のAさんだ。地方出身で、仕事に便利な立地が決め手となり、7年間、在住。住み始めて気づいたのは、「賃貸価格は高いが、中目黒は世間のイメージよりずっと素朴で地味」ということ。

どこに行くにも便利だが、「晴れた日に外に干してもなかなか洗濯物が乾かない」と妻が嘆くほど道が狭く、日当たりが悪い住宅街に昔から住んでいる2世帯同居家族が多い。後からやってきた高所得者と違い、ごく普通の収入の家庭が大半だ。小学校、中学校と親子で同じ公立校に通った幼馴染みの親同士も仲良し。

流行の店が立ち並ぶ一角から少し離れた路地に入れば、昔ながらの商店街も健在で、お祝い事があると「親子代々通う地元の寿司屋さん」に足を運ぶ。ゆえに、子供たちはなんと、イマドキの回転寿司やイオンモールを知らずに育つ。近くに次々とできるおしゃれな店とは無縁だが、たまに家族で「お出かけ」するさいは、東急沿線の二子玉川や自由が丘へ。流行の発信地のすぐ横で、のびのびと子供たちが育つ環境が好ましい。

ただし、「そうした環境は一方で今の時代、少し不安」とAさんの妻は言う。ご多分に漏れず、高齢化が進んでいて、独り暮らしの住人が亡くなった後は空き家になっている例も多いという。だから、2~3人兄弟が多いにもかかわらず、子供の絶対数は少なく、競争意識が薄い。その結果、のんびりしすぎて、受験熱が低い傾向がある。地元小学校の中学受験率は20%ほど。都心のわりに確かに受験率が低い。ニコタママダムやタワーマンション住民の中にいるような、いわゆる「教育ママ」も「そういえば、あまり見当たらない」(Aさん)。

▼中目黒マダムの不満5

[1]家賃が高い、狭い、日当たりが悪い
[2]受験熱が低く、のんびりしすぎ
[3]子供の絶対数が少なすぎ
[4]地元で何をしてもすぐわかってしまう
[5]花見の客が多すぎる!