山西 惇さん
1962年、京都府生まれ。京都大学工学部石油化学科在学中、劇団そとばこまちに参加。卒業後は演劇を続けながら一般企業に4年弱勤務するが、俳優に専念するため退社。以来、演技派俳優として活躍中。テレビドラマ「相棒」では水谷豊演じる杉下右京ら特命係のもとにやってきては、パンダのコーヒーカップを片手に「ヒマか?」と声をかける角田六郎課長役を15年近く演じている。
「ささやカフェ」は芝居の稽古でよく使わせていただいているスタジオと同じ敷地内にあるお店です。この稽古場には昨年、井上ひさしさん脚本の「きらめく星座」という芝居の稽古で1カ月近く通っていたので、よく利用させてもらいました。家族でスカイツリーに行ったとき、5歳、3歳、1歳の子供たちを連れてきたこともあります。適度に広いし、子供連れのお客さんが多いので気兼ねなくくつろげました。
こちらはヴィーガン(厳格な菜食主義)のお店ですが、僕自身は菜食主義ではありません。でも京都出身ということもあり、素材の味を生かした薄味が最高だと長年信じていて、マヨネーズなどはあまり食べなかった。ところが子供と同じものを食べるようになって、食べてみたら「うまかったや~ん」(笑)。今はマカロニサラダとかポテトサラダも好きですね。
今は「きらめく星座」に続いて同じ井上ひさしさん作の「藪原検校」という作品の稽古中です。僕の役は盲太夫(めくらたゆう)といって、全体の話の進行役。冒頭からラストまで一度も引っ込まず、ずっと舞台の上で膨大な量のセリフをしゃべり続けなければならないんです。
僕は京大出身ということで、「Qさま!!」などお勉強がテーマのクイズ番組にも出させてもらっていますし、暗記は不得手ではないつもり。ところが45歳過ぎくらいから、なんでこんな言葉が? というセリフが本番中に出てこないことがありましてね。初日でもないのに、「おまえ、オレを責めてるのか」と言うべきところ、「おまえ、オレを……」で絶句してしまった。数秒後になんとか思い出せましたが、一度あったことは二度あるはずと覚悟して稽古しています。
しかも難しいのは、「盲太夫」という役名の通り目が見えない設定なので、ずっと目を閉じて演じること。ほかの役者さんたちのほうを見ることもできず、耳だけが頼り。セリフって意外と、照明の感じとか、相手役の表情とか、そのとき見えているもので覚えているものなんですよ。でもそういうものが一切ありませんから、いったいどうなることか。なんだか体力を消耗しそう(笑)。前に同じ役を演じられた浅野和之さんも、「オレ、座っているだけで汗もかかないのに、なぜか本番中にどんどん痩せていったんだ」と言っていましたから。でもこんな機会はそうないので、精一杯やらせてもらいます。(※公演は終了しています)