儲けよりも親子の論理が勝る世界
親会社と子会社の給料水準について、考えてみましょう。
通常、企業ごとの賃金水準は、「企業規模」「業種」「収益力」に沿って決まってきます。
大企業>中企業>小企業
マスコミ、商社、金融>製造業>小売業、ホテル・飲食業
高業績企業>低業績企業
しかし、ここに親会社・子会社という関係を加えると、全く異なった景色が見えてきます。
表は、金融機関を子会社にもつ親子企業間の平均年収(2014年決算時。以下同じ)比較です。一方が持ち株会社(ホールディングス)組織のケースもあり、正確な比較はできませんが、一様に親会社側の平均年収が上回っています。子会社側が、通常賃金水準の高い金融機関であるにもかかわらずです。
大企業であれば、何十、何百といった子会社、関連会社を有しています。このような子会社、関連会社は通常、親会社よりも低い給料となっています。従業員の賃金水準を抑制することも、グループ会社設立の目的の一つだからです。
たとえば、親会社が自ら工場を建ててつくるよりも、賃金水準の低い子会社を設立し、製造を委託する方がコスト面でのメリットが大きい。そのため、子会社の方が社員数は多かったとしても、規模の論理は成り立たず、親会社よりも低い賃金水準となるのです。
また、上記のように親会社との取引関係で成り立っている会社の場合には、生産性や収益性の論理も成り立ちづらいといえます。親会社からの発注価格1つで、収益はいかようにも変化してしまうからです。1個100円で発注している部品を90円に引き下げただけで、子会社の売上高は10%低下し、利益はそれ以上に吹き飛んでしまいます。そのため、子会社側がいくら高収益であっても、親会社より高い賃金水準になることは難しいのです。