賃金カーブが世界の国々と大きく異なる

人事コンサルティング大手のヘイコンサルティンググループが各国大手企業の役職階級別の年収(基本給、一時金、手当)を調査して、日本の課長級を「1」として指数化した興味深いデータを発表している。

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日本人のマネジャークラス以上は恵まれていない

それによると、日本の部長級は1.36なのに対して、中国は1.64。本部長・事業部長クラスではさらに差が開いて、1.68対2.57。

タイにおいては、課長級は0.49と日本の半分以下だが、部長級は1.35と日本と同水準になる。これが本部長クラスでは2.24まで伸びて、伸び率としては日本の倍以上となるのだ。

成果主義や能力主義が徹底している欧米に比べて、日本の管理職の給与水準は低いというイメージが強い。実際、ヘイのデータでも、アメリカやドイツと比べて、部長級から先の差が大きくなっている。

しかし、今や欧米だけではない。同じアジア圏の中国やタイと比較しても、部長級以上の日本の管理職の給与水準は下回ってきているのだ。

日本企業の給与水準が頭打ちになった一方で、経済の伸長著しい新興国の給与水準が上昇局面にあること。そして為替の円安傾向が日本の管理職の年収を目減りさせている側面もあるが、こうしたデータの背景には日本の賃金カーブが世界の国々と大きく異なるという根本的な問題がある。

私が在籍していたマッキンゼーは給与体系のいい会社で、特に「ディレクター」と呼ばれるクラスのコンサルタントは大企業のトップに引き抜かれないように給料を高く設定していた。それでもルイス・ガースナーのような野心的な人間は「アメリカン・エキスプレスの会長にしてやるぞ」と言われるとポンと出ていってしまうのだが、それはあくまでも例外的な事例だ。

コンサルティング会社の資産は、人材しかない。我々は「エレベーターによる資産の移動」と言っていたが、夕方にエレベーターで会社を出た後、もし転職して次の日に会社に戻ってこなかったら、会社の資産が失われることになる。だから「エレベーターによる資産の移動」がないような給与体系にしておく必要があった。