バラク・H・オバマ大統領とは何者か
2009年1月20日に就任してから5年超の任期を経過した米バラク・H・オバマ大統領だが、そろそろオバマ氏とは何者かという評価と反省の時期にきているのではないかと思う。
振り返ってみれば、リンカーンの生誕200周年を記念して「自由の新しい誕生(A New Birth of Freedom)」と題された就任式の演説や09年4月5日にチェコ共和国の首都プラハで、「核のない世界を目指そう」と世界に語りかけた演説は素晴らしかった。大学の弁論大会の優秀なスピーカーがそのまま大統領になったような感じで、理想を語るとき、オバマ大統領の言葉は人の心を打つ。
しかし米軍の最高司令官という大統領の側面から見たとき、州知事や外交委員会の委員長を長くやった人たちに備わっているようなファイティングスピリッツに乏しく、敵を嗅ぎ分ける嗅覚、方向感やスピード感も相当に怪しい。たとえば大統領選のときに、当時のオバマ候補は、イラク侵攻は間違いだとG・W・ブッシュ前大統領および共和党を散々責め立てた。
大統領就任後は、イラク撤兵を進める一方で、「本当の敵はアフガニスタンにいる」とし、アフガニスタン派兵を増強した。その意味では戦争好きな米大統領らしい“匂い”を感じたが、「本当の敵」と見定めたアルカイダやタリバンの活動は一向に収まらず、その象徴であるウサーマ・ビン・ラディンはパキスタンの隠れ家に新妻や家族と潜伏していたところを発見、殺害された。
結局、米軍約30万人、ドイツやオーストラリアなどの友好国にも出兵させて多大な犠牲者を出したアフガニスタン派兵とは何だったのか、何一つ答えが得られないまま、アフガニスタン駐留米軍の撤退が始まっている。かつての旧ソ連と同じく“オバマの戦争”と言われたアフガン派兵も徒労に終わった、と言える。
シリア問題でもオバマ大統領は米軍の最高司令官として毅然とした態度を貫けずに、アメリカの威信低下を招いている。
化学兵器の使用が疑われたアサド政権に対して、オバマ大統領は、「国際社会や人類にとってのレッドライン(容認できない一線)を越えている」と、武力行使に踏み切る意向を表明した。