プーチン大統領の存在感が際立つ

クリミアのロシアへの編入手続きにサインするロシアのプーチン大統領。
(RIAノーボスチ/AFLO=写真)

大上段に拳を振り上げては、振り下ろす場所が見つけられず、尻すぼみに外交的解決の道を探る――。これが、オバマ外交お約束のパターンで、極めつきが今回のウクライナ情勢である。オバマ大統領はロシアに対して「ウクライナへのいかなる軍事介入も代償を伴う」と警告を発した。代償とは何なのか、判然としない物言いで、最近は得意の演説も冴えない。

ウクライナへの軍事圧力を強めるロシアへの代償として、アメリカはロシアの一部当局者の資産凍結や渡航禁止などの制裁措置を発動した。しかしロシアのプーチン大統領は意にも介さず、ウクライナからの独立を宣言したクリミアを一旦独立国家として承認し、クリミア議会の要請を受けてロシアに編入した。

欧米は非難轟々で制裁措置の追加を決めたが、プーチン大統領は「制裁措置は攻撃的行為とみなして報復する」として、欧米要人のロシア国内の資産凍結や渡航禁止、ロシア企業への海外資産引き揚げ勧告などの報復措置を取って、さながら(あまり効果のない)制裁合戦ゴッコの様相を呈してきた。

それにしてもG7で連携してロシアに圧力をかけるオバマ大統領に比べて、一人受けて立つロシア軍最高司令官、プーチン大統領の存在感がいかに際立つことか。ウクライナ問題は国際社会におけるリーダーの資質を浮き上がらせる恰好の教材となっている。08年に起こったグルジア紛争のときもそうだった。北京オリンピックの開会式前日、グルジアからの独立を目指す南オセチアにグルジア軍が侵攻。北京から取って返したプーチン首相(当時)はロシア軍を動かしてグルジアを叩きのめし、南オセチアに独立宣言を出させた。

このときアメリカが何をやったかといえば、グルジアのミへイル・サーカシビリ大統領に軍事顧問団を派遣しただけ。それもロシアに非難されるのを恐れて、グルジア軍に紛れ込ませていた。一方で地中海に配備した米艦隊をボスボラス海峡から黒海に進めていたが、これ以上は動かず。対して、ロシアは易々と南オセチア共和国と、同じくグルジアからの独立を宣言したアブハジア共和国を押さえた。

今回のクリミアの独立承認、ロシア編入も同じような構図だ。プーチン大統領としては一時的な反発や制裁は織り込み済みで、既成事実化を進めることで、最終的にはクリミアのロシア編入を国際社会が黙認せざるをえないだろうという“読み”があるように思える。