月10万円で「なだ万」の朝夕食
「老後」といえば、介護の不安が頭をよぎるが、実際に生活が困難になるのは、ずっと先の話だ。生命保険文化センターのまとめによると「要支援・要介護」の認定者は、75~79歳でも13.5%。80~84歳は28.4%、85歳以上では58.4%にまで高くなるが、80歳未満では7割以上の人が元気に暮らしている。
それではリタイア後にどこで楽しく過ごせばいいか。60代から老人ホームというわけにもいかない。特に独身や子なし世帯には切実な問題だ。千葉県稲毛市にそんな「アクティブシニア」を集めた新しい形の住宅がある。
2010年に開所した「スマートコミュニティ稲毛」では現在約400人が暮らしている。平均年齢は69.8歳。入居者の半数以上は単身者で、全体の男女比は4対6。昨今入居ペースが上がっていて、2日に1人の割合で入居者が増えている。
運営するスマートコミュニティの宮本雅史会長は、ゲームソフト『ファイナルファンタジー』を制作したスクウェア(現スクウェア・エニックス)の創業者で、投資家としてこの事業を立ち上げた。宮本会長は「高齢者の生活コストを半分に下げることが事業の出発点だった」と話す。
「『月20万円分の生活を10万円で提供する』というのがポリシーです。厚生年金の受給額は平均で月16万円程度。将来の切り下げを見越せば、10万円程度に抑えたい。さまざまなサービスを『共同購入』すればコストは下げられます。稲毛では1000人規模とする予定です。将来的にはこうした暮らし方を当たり前のものにして、高齢者の生活コストを引き下げ、次世代の負担を減らしたいと思っています」