ビジネスマンにとって、もう1つ重要な資質がコミュニケーション能力です。これはプレゼンテーション能力ではありません。自分の状況や意思、主張を相手にきちんと伝える能力なのです。コミュニケーション能力が高い人は、上司や部下と良好な人間関係が保てますが、低い人は社内の味方が少ないため、リストラされやすくなります。

チェックリストでは、[3][4][10]に該当すれば、コミュニケーション能力が高いと見なせるでしょう。[3]は信頼できる人間関係が築けているということ。[4]もバランス感覚とともに、幅広い人脈を持っていると評価できます。こうしたことから、コミュニケーション能力の高さも推し量れるわけです。

また、[10]の人もオープンマインドなので、交友関係が広いでしょう。[8]は自己肯定の意識にもつながっています。自己を肯定している人は他人も肯定していて、人間関係がスムーズなことが多いのです。

裏メニューですが、亭主関白の人もリストラされる確率が高いのです。亭主関白の人は、夫婦間のコミュニケーションがうまく取れていません。最大の味方であるはずの奥さんにもコミットできないようでは、他人を味方につけられるはずがないからです。家では、奥さんの話に耳を傾けるようにしましょう。

コミュニケーション能力が低い管理職は、プレーヤーとしては優れていても、マネジャーとしては失格です。今や多くの企業で部下が上司を査定している時代。部下の意見を吸い上げ、能力を引き出せなければ、管理職は務まりません。ひところ話題になった「クラッシャー上司」など論外。いくら仕事ができても、貴重な若手を潰すようでは、もはやお役御免を言い渡すしかありません。

物事を多面的に見て、相手の立場で考えられることも、コミュニケーション能力の1つだと考えます。私はダイバーシティ(働き方の多様性確保)のワークショップ(体験型教室)で、「育児中で時短勤務の部下が、保育園に子供を迎えにいかなくてはならない時間なのに、仕事が立て込んでいます。あなたならどう声をかけますか」と、管理職の人たちにテストしたことがあります。

コミュニケーション能力の低い管理職は、「会社の指示だから、定時で帰宅してください」と言うだけで、部下の立場が全くわかっていません。部下と相談して状況を聞き、仕事の段取りを変えるべきなのです。こうした対策を素早く打っていける管理職なら、リストラの嵐を潜り抜けやすいといえるでしょう。

そのほか、チェックリストの[1]のように、社会や経済の動き、会社や同業者の状況には、常に関心を持ちましょう。[6]のように、見聞を広めることも大事です。[5]は生活上のリスク管理能力の指標。家計が切迫していなければ、今後のことを考える余裕や準備するための時間が生まれます。

残念ながら、リストラの憂き目に遭ってしまったという人も、あきらめることはありません。たとえば、営業マンとしての実力があれば、今の会社を辞めても活躍の場はあるはず。営業のスペシャリストとして、自分を売り込めばいいのです。ベンチャー企業でも、大企業からスピンアウトし、営業や財務といった“その道のプロ”として返り咲いている人が大勢います。

ただし、そうなるには意識を改革し、自分を客観的に評価できるようになることが必要です。試しに、大学などの同窓会に出席してみてください。男性は自分とほかの同級生の肩書や年収を比べがちですが、もし他人のことが気にならなかったら、それは、あなたが正しく自己評価できるようになった証しなのです。

東洋大学 グローバル・キャリア教育センター副センター長
小島貴子
(こじま・たかこ)
三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、1991年埼玉県庁入庁。立教大学特任准教授を経て、2011年東洋大学経営学部准教授に就任。12年から現職を務める。著書に『小島貴子式仕事の起爆力』など。
(構成=野澤正毅)
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