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視覚と数字のダブルパンチ

機関投資家や報道記者に企業の業績予測を伝えるのが大和証券ストラテジスト 守田 誠氏の仕事だ。テーマはキャッチーでタイムリーなものを選ぶ。今回紹介するのは9月末の勉強会用資料からの抜粋で、消費増税が企業業績にどれくらい影響を与えるかを説明するものだ。

守田氏の資料作りの第1の特徴は、結論を最初に書く構成にある。このケースでは、最初に「増税の影響は少なく2014年度の企業業績は過去最高益を見込む」と結論付ける。そして今の消費トレンドを加味すると民間最終消費の落ち込みは軽微であり、さらに所得環境が改善すれば消費が上振れする可能性があり、外部環境が悪かった1997年の増税時とは状況が違うと解説する流れだ。

2番目の特徴は、相手によって数字の見せ方を変えること。

「投資家は数字が命。記者向けには為替の動きを折れ線グラフで伝えますが、投資家には為替レートそのものを提示します」

為替レートの表は細かく、一般人からすれば「読みにくいスライド」になってしまうが、それでもあえて数字を入れて投資家のニーズに応えているのだ。

3番目の特徴は、議論が活性化しそうな資料を併せて添付すること。

全体で1時間ほどある投資家とのミーティングのうち、プレゼンは20~30分程度にとどめ、残りは相手とのディスカッションに振り向ける。「投資家はそれぞれ関心のポイントが異なるので、個別に質問を受けて答えていくほうが実践的」」(守田氏)だからだ。

今後の業績という不確定な話なので、意見がぶつかり合うケースもある。そんなときは資料が議論の土台として重要な役割を果たす。そのため、添付資料は自分が言いたいことを言うためのものではなく、議論が活性化しそうかどうかでセレクトする。たとえば、業種別の業績予測や家計調査などだ。特に質問を受けやすい項目については、もっと細かな個別企業のデータを手持ち資料としてあらかじめ用意しておく。

また勉強会には出席しないが資料だけ欲しいという投資家がいるため、見るだけでも伝わるように図表から読み取ってほしいポイントを枠囲みにし、個条書きで示している。

資料作成やプレゼンの研修は受けていないという。これらはすべて「お客様から不備やわかりにくさを指摘されながら資料作りを磨いてきた」と言う守田氏が考案した独自の作り方だ。