これで少しは社内の空気もピリッとしましたが、一度号令をかけたぐらいでは組織は変わらない。「コンパクトで筋肉質な会社を目指す」ということはリストラ路線ですから、抵抗がものすごくある。

バブル期に買った土地や株を片っ端から叩き売ろうとすれば、「誰がそれを買ったんだ」、不良在庫を処理しようとすれば、「誰がこんな売れない商品を作ったのか」という責任問題に発展する。誰も手をつけたがらない。

「在庫処分は社長の責任だ。誰の責任も問わない」と言っても動かない。最後には自分で物流センターに乗り込んで、怒鳴り散らしながら埃を被った商品ケースを床に叩きつけました。

それぐらいのパフォーマンスをやって、「責任は問わん」と言い続けて、ようやく在庫が減るようになった。就任当初は860もあった商品アイテムは、3年かけて300を切りました。

最初にガツンと旗をぶち上げたら、ひたすら旗を振り続ける。継続は力なりというけれど、社長業は我慢業です。

役員から恐れられれば組織は引き締まる

役員と一般社員とでは話し方が違います。私は役員と個人的に酒を飲んだりしません。妙に馴れ合えばつけあがる。そうなれば締め上げるのが面倒だし、情が湧けば評価の目が曇って道を誤る。だから役員には厳しく接します。そして突き放す。「それはおまえの仕事だ。おまえの責任で何とかせい」と。そうしないと何でもかんでも社長の判断を仰ぐようになりますからね。ワンマントップの場合はなおさらです。

トップが役員から恐れられれば、組織は自然と引き締まります。逆に一般社員とは親しく付き合う。一緒に酒を飲んだりしてね。会長になった今でも会社のあちこちに顔を出して、気軽に社員に話しかけています。

セクションによって声かけの仕方も違ってきます。研究開発のグループなどは年中、頭をひねくり回している連中ですから、「死んじまえ」なんて乱暴なことを言ったら、シュンとしてお先真っ暗になってしまう。その点、営業の連中はメンタルタフネスですから、単刀直入に「おまえはアホか」と(笑)。