社長業は我慢業、語り続けるしかない

エステー会長 鈴木 喬氏

社員と話をするときに心がけているのは、長話をしないことです。キーワード一発。出合い頭の勝負ですな。

スピーチでも最初の3秒でほぼ決します。わが社では毎月1回、全体朝礼をやっていますが、そういう場で話をするときもつかみが大事。私の場合、タイトルしかないんです。パワーポイントで書いたタイトルだけ見せて、あとは社員の顔を見ながら話をする。

ポイントを3つぐらいに絞ってね。3つ以上になると、言われたほうも言うほうも忘れちゃう。本当はワンポイントだけで完結するのが、メッセージとしては一番響きますよね。大体、普通の人間が集中して話を聞ける限界は15分ぐらい。あとは眠くなっちゃう。

社長はコミュニケーション業だと私は思っています。社員に根気強く語りかけるしかない。わかってもらえるように努力するしかないんです。

組織というのは、トップの一言で簡単に動くものではありません。特に日本の会社組織の場合、社長に解雇権がないから、言うことを聞かない社員がいてもクビは切れない。向こうは「何、言ってやがる」ってなもんです。

私がエステーの社長になったときも、そうでした。「このオッサンについていっても大丈夫かな」と思わせるまでに時間がかかった。社長に就任した1998年当時、会社の状況は最悪。バブル崩壊後、売り上げこそ横ばいでしたが、利益率は下がり続けていて、バブル期に買い漁った資産は二束三文に。最高値7590円だった株価は364円まで落ち込んでいました。

ところが危機感を抱いていたのは私だけで、「すぐによくなる」と皆が思い込んでいる。だから社長就任演説の冒頭でケンカを吹っかけた。

「コンパクトで筋肉質な会社を目指す。俺の目に叶わんヤツは叩き殺す!」

不良資産の売却、860近くあった商品アイテムの削減、年間約60種類も出していた新商品の絞り込み、在庫の大幅削減……。短期でやるべきこと、中期でやるべきことを全部ぶちまけたうえで、ハッタリをかましたわけです。