明朗快活、会話も楽しく。皆の気持ちを高揚させる

クレディセゾン社長 林野 宏氏

最近、20世紀に成功した企業が苦境にあえいでいます。簡単にいえば、成功を支えた組織と、それを構成する人の能力が陳腐化しているということ。典型的な例が家電業界ですが、実際はあらゆる業界に共通していえることで、現時点で陳腐化が表面化していなくても、それは競争相手も似た状況だから目立たないだけ。競争のグローバル化が進むにつれて露わになってきますよ。

そんな今の時代に求められるリーダーは、ビジョンや夢を掲げて部下に説明し、共感させ、率先垂範して巻き込んで一緒に仕事をやっていくタイプ。その正反対が社内のヒエラルキーに沿った管理、監督、指示、命令。20世紀に成功した企業がこれで、情報を遮断して与えたい情報だけ部下に与えるとか、人事考課や人事異動を武器に組織を動かしてきた。この手法が、今や通用しなくなってきています。

リーダーがビジョンや夢を語るというのは、実はそれほど難しいことではありません。が、語るだけではダメ。現実感に欠けると、かえって社員やチームの人たちのやる気を失わせてしまう場合もあります。このギャップを埋めるのが数字です。特に大きな夢や目標は、社員やメンバーにとって現実感のある細かな数字を提示すること、さらに勝てる理由をロジカルに説明し続けることが、やる気にさせるコツです。

私がクレディセゾン(旧西武クレジット)に転籍した1982年当時、社内は下を向いている社員ばかりでした。無理もありません。前身の緑屋は経営危機に陥り、セゾングループに入った後も再建がスムーズに進んでおらず、連戦連敗でした。

こうした社内の空気を変えるために、私は「日本一のカード会社になる」というビジョンを掲げました。社員が下を向いてしまうのは夢や希望がないからで、顔を上に向かせるためには視線を向ける対象が必要だったからです。

この目標を、月10万枚のカード発行という数字で示しました。1年で120万枚。当時、業界トップだったJCBのカード有効会員数は約700万人。JCBが現状維持なら計算上は6年で抜けます。一見、無謀ですが、具体的な数字に落とし込めば、決して手が届かないものではないとわかります。